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鍼灸と期外収縮③

2025.03.20 | Category: 鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。

今回は「期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究」についてお話させて頂きたいと思います。

前回、期外収縮と鍼灸の関わり、鍼灸が身体にどのような影響を与えるのかについてお話させて頂きました。また、東洋医学的観点からみた期外収縮についても少しお話させて頂きました。

今回は実際に鍼灸を用いてどのような研究が行われているのかをみていきましょう。

◎期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究(心室性期外収縮 (PVC)に対する鍼灸治療の症例)

 

【症例】41歳 男性

主訴:不整脈と肩こり

既往歴:過去3回の発作性心房細動

現病歴:上腹部の不快感からに内科医院を受診し、 ホルター心電図の結果から PVC (0.1%以下) がみられるものの問題なしと診断される。症状が悪化し、 12誘導心電図とホルター心電図を実施し、 PVCの単発総数と2段脈の増加がみられたが薬物療法は勧められず経過観察となった。 しかし、 日常生活で不快感があることから鍼治療を開始することとなった。

【方法】鍼治療は不整脈の治療として、 内関、 心兪、 神門、 足三里、 百会、 中、 太渓を選穴し、 旋撚後に10分間の置鍼を行った。

肩こりの治療として、 圧痛部位に10分間の置鍼を行い、 治療頻度は2回/週とした。

効果判定は胸部不快感(テスト法:VAS)、QOL(テスト法:SF-36v2)、 24時間のPVCの総数(テスト法:ホルター心電図)とした。

【結果】1診目の胸部不快感によるVASは1診目では68mm、 3診目では9mm、 5診目では 15 mm、 7診目では4mm、 9診目ではVASが3mmとなり、 SF-36v2の改善も見られた。 日常生活においても不整脈による不快感はほぼ消失した。 また、 治療開始前のPVC単発回数は534回/日、 2段脈は3回/日であったが、 2週間後のPVC単発回数は120回/日、 2段脈は0回/日となり、 PVC総数は正常範囲に近づいた。

【考察】PVCに対する鍼治療は薬物療法との併用だけでなく鍼治療単独でも有効となる可能性があり、 医師の診断によって安全性を考慮した上で行う鍼治療はPVC総数を減少させQOL(生活の質)を改善させることが示唆された。

 

【症例】58歳 男性

現病歴:高血圧 左心室肥大冠不全 4拍に1回程度の心室性期外収縮あり

【方法】坐位(座った状態)で心兪、厥陰兪、左右両側それぞれ10回ずつ雀啄し10分程放置

【結果】正常の洞調律となった

 

【症例】58歳 女性 専業主婦

主訴:早朝どきんどきんとしてくる心室性期外収縮

現病歴:冠不全

【方法】郄門 左右両側の低周波刺15分

【結果】3回目の治療にて消失が確認された

 

【症例】56歳 男性 高校の校長

主訴:自分ではあまり自覚はない

現病歴:心室性期外収縮、忙しいので過緊張が続いていたが健康診断時に不整脈といわれ精査を命ぜられた。胸部X線 、血圧、UCG等 に特に異常はないが、心塞性期外収縮がありトレッドミル(=ランニングマシン)Bruce2度(=運動レベル)でも冠不全の所見はない。

【方法】郄門に左右両側低周波刺激15分。尚薬物療法していない。

【結果】3回目の治療にて消失が確認された

 

【症例】69歳 女性 専業主婦

主訴:動悸、息切れ

【方法、結果】郄門置針10分後に大分らくになりS-Tの改善がみられ、さらに低周波通電を行ったところ15分にしてほとんど自覚症はなくなりECG上S-T降下も正常にもどっている

 

【症例】48歳 男性 会社社長

現病歴: 高血圧 冠不全

【方法】20分仰臥安静後坐位にて心兪、厥陰兪へ左右両側置針15分

【結果】S-Tの降下度が軽くなっている。尚此の例にトレッドミル(=ランニングマシン)による運動負荷をこころみたがBruce1度(=運動レベル)でもすぐS-Tが降下してくるが心兪、厥陰兪の置針の場合はS-T降下度が少なく呼吸もずっと楽であることを確め得た。

(S-Tの降下は心臓の肥大があったり、心臓の血液循環が十分でなく、心筋への血液供給が不足する場合にみられる所見)

 

 

【考察】

以上2例より置針、低周波通電はニトロール様作用(二トロール錠:狭心症や心筋梗塞などの治療に用いられる薬。胸の重苦しい圧迫感やしめつけられるような胸痛を速やかに和らげる)を有していると考えられる。

⑤の冠不全で洞性頻脈がつづきインデラル60mg/日 使用中頻脈はとれるが心兪、厥陰兪置針後のS-T改善は著明でなく、アダラート30mg/日 使用時にはS-T改善が著明にみられた。したがってS-T改善作用は先ず交感神経にはたらくと考えられる。しかし脈膳の増加、血圧上昇等はみられないので更に他の神経メカニズム或いは血中物質の作用があるのであろうと推定せられる。生理学者の佐藤(東京都老人病綜合研究所)は皮膚内臓反射をくわしく研究しているが、マウスの皮膚をつまむと脈増加反射がおこり、これは交感神経を介しておこることを実証していることは興味深い。

 

◎要約

自律神経の過緊張による心室性期外収縮、又虚血による心室性期外収縮は郄門置針低周波通電により(2~3回)消失した。その際心筋活動の高まりと共に左心房内腔がせまくなり左心機能の改善にもつながると考えられる。著明な血圧変動、脈騰変動はない。自律神経の過緊張の調整、虚血の改善が主な作用と考えている

 

 

今回は「期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させて頂きました。少し専門用語などもあり難しい内容となっておりましたがいかがでしたでしょうか?

前回お話させて頂いた通り、鍼治療は自律神経の調整に作用し、期外収縮へ効果を及ぼしているという事がここから読み取れるかと思います。

次回は「期外収縮に対する鍼灸治療で使われる経穴」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。


セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と期外収縮②

2025.03.14 | Category: 東洋医学,自律神経,鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。

前回、期外収縮の概要についてお話しさせていただき、その中で注意すべき期外収縮とそうでないもの、また原因についてもご紹介しましたが、原因の1つとして「精神的なストレスや疲れ」があげられていたことを覚えていますでしょうか?
鍼灸治療において最も注目すべき効果として、この「精神的なストレスや疲れ」にアプローチすることが出来るのです。
鍼灸治療は、自律神経の調整や血流の改善、炎症の抑制などを通じてさまざまな疾患の管理に役立つと考えられています。近年、心血管疾患に対する補完代替医療としての可能性が注目されており、期外収縮に対する効果についても研究が進められています。
一体鍼灸が体にどのような影響を与えて、期外収縮に効果をもたらすのか見ていきましょう。

◎東洋医学的観点から見た期外収縮
前回お話しさせていただいたように西洋医学では、期外収縮は心臓の異常な電気信号によって引き起こされる不整脈の一種とされ、自律神経のバランスや電解質異常、心血管疾患、ストレスなどが発生要因とされています。
一方、東洋医学では、期外収縮のような不整脈を「結脈」「代脈」という呼び方をします。この2つの呼び方の違いは以下の通りです。
結脈 ゆるやかな脈で、時々止まる。主に陰寒や積滞内阻による。不正脈。
代脈 ゆるやかで時々止まるのは結脈と同じだが、止まるのに定まった規則性がある。臓気の衰退。
東洋医学では気や血の不足や滞り、陰陽のバランスの乱れが主な原因であると考えられます。心臓の働きは「心(しん)」という概念に基づき、全身の血流を管理する役割を持つとされています。「心」の機能が正常であれば血液はスムーズに流れますが、気血の不足や停滞、陰陽のバランスの崩れによって心拍が乱れ、期外収縮のような不整脈が生じると考えられます。
具体的な例を見てみましょう。

・気虚・血虚(心気虚、心血虚)
心気(しんき)は心臓を動かすエネルギー、心血(しんけつ)は心臓の働きを維持する栄養源とされ、これらが不足すると心臓の活動が不安定になり、不整脈が起こりやすくなります。
主な症状:疲労感、息切れ、めまい、不眠、顔色の蒼白、冷え性

・瘀血(おけつ)
血流の停滞があると、心臓への血流供給が悪化し、不整脈が発生しやすくなります。特に、動悸や胸の圧迫感を伴う場合、瘀血の影響が考えられます。
主な症状:胸の圧迫感、刺すような痛み、舌の色が暗紫色、顔色のくすみ

・気滞(きたい)
ストレスや精神的な負担が続くと、気の巡りが滞り、自律神経の乱れを引き起こして期外収縮が生じることがあります。
主な症状:ため息が多い、胸の張り感、不安感、イライラ、便秘や腹部の張り

・陰虚(いんきょ)
体内の陰液(血や津液)が不足すると、心火(しんか)が過剰になり、不整脈が発生しやすくなります。特に、夜間に期外収縮が悪化する場合は、陰虚の影響が考えられます。
主な症状:寝汗、口の渇き、ほてり、不眠、動悸、舌の色が紅い


◎鍼灸治療による効果
東洋医学的観点から見た期外収縮についてお話しさせて頂いたところで、次に鍼灸治療が体に与える効果についてご紹介していきます。

・自律神経の調整
期外収縮の発生には、自律神経のバランスが深く関与しています。自律神経は交感神経と副交感神経の2系統に分かれており、簡潔に役割を説明すると交感神経は戦闘モード、副交感神経は休憩モードといったようにそれぞれ担当しています。また交感神経はストレスを感じた際にも作動し、交感神経が優位になると心筋の興奮性が高まり、不整脈が生じやすくなります。
そのため鍼灸は副交感神経を優位にすることで自律神経のバランスを整え、心拍の安定化、またストレスに対する反応に作用するとされています。とある研究では心拍変動(HRV)を改善し、心拍の乱れを抑制する効果があるとの報告もされています。

・炎症の抑制
一説では慢性的な炎症や酸化ストレスが心筋の異常な興奮に関与していると考えられています。研究によると、鍼灸は炎症マーカーであるC反応性タンパク(CRP)やインターロイキン-6(IL-6)の低下に作用し、不整脈の発生を抑える可能性が示唆されています。

・血流の改善
鍼灸は血流を改善し、心筋への酸素供給を安定させることで不整脈を防ぐ効果が期待されます。
鍼灸治療のメカニズムについては当HPの右側の欄の「一般施術」→「鍼灸治療」から詳しい説明を見ることができますのでご興味がございましたら是非ご覧ください!


今回は「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。


セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と期外性収縮①

2025.03.07 | Category: 未分類

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今月は「鍼灸と期外収縮」についてをテーマとしてお話させて頂きたいと思います。


日常生活の中で「脈が飛ぶような感じがする」「動悸がする」「胸がつまったような感じがする」といったお悩みを持つ方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?
その原因の一つとして考えられるのが 「期外収縮」 という不整脈です。
不整脈と聞くと、「心臓の病気なのではないか」と不安に思われるかもしれませんが、実は半数以上の人が無自覚に経験しているものであり、健康な人にも起こることがある現象で、多くの場合は生死に関わるものではなく心配のないものです。
「不整脈」は一般に「心臓の拍動が不規則なもの,速くなるもの,遅くなるもの」を指し、不整脈の一種である「期外収縮」は中でも正常な拍動の間に時々不規則な拍動が現れるタイプにあたります。
しかし例外として頻繁に起こる場合や、息苦しさ・めまいを伴う場合は、体からのサインかもしれません。
鍼灸治療と期外収縮の関係をお話していくにあたって今回はまず期外収縮とは何か学んでいきましょう!

◎期外収縮とは
心臓は常に一定のリズムで動いており、通常であれば

「トッ・トッ・トッ・トッ」

と等間隔に拍動しています。しかし、この一定のリズムが崩れて

「トッ・トトッ・トッ・トッ」

というように心臓の通常のリズムとは異なるタイミングで余計な収縮が起こる現象のことを期外収縮と呼びます。
実際に期外収縮が起こった方からの声では「脈が一瞬止まったように感じる」「突然ドクンと強い動悸がする」「胸がザワザワする感じがする」といった症状を感じられるそうです。

心臓は普通、洞結節という場所から発生する電気信号でリズムよく動いています。この洞結節は心臓の右心房の上部にあり、特別な細胞が集まっていて、他の神経を介さず自発的に電気信号を作り出します(自動能)。その信号が心房に伝わり、房室結節を通って心室に届き、心臓の筋肉が収縮して血液が体中に送り出されます。
通常、洞結節からの信号は一定の間隔で発生し、心臓のリズムは安定していますが、期外収縮では正常なリズムから外れて、早すぎたり遅すぎたりする収縮が発生します。


・期外収縮の原因
期外収縮が起こる理由は様々で、一例として以下の要因があげられます。

①心臓疾患
心筋梗塞や心不全、弁膜症など、心臓に病気がある場合、期外収縮が発生しやすくなります。

②電解質異常
血液中のカリウムやカルシウム、マグネシウムが不安定だと、心臓のリズムが乱れることがあります。

③薬物やカフェイン
一部の薬やカフェインが心臓に影響を与え、期外収縮を引き起こすことがあります。

④ストレスや疲れ
精神的なストレスや体調不良も、心臓に負担をかけて期外収縮を引き起こすことがあります。

心臓のご病気がない方は④のストレスや疲れが要因となるケースは多いです。

 

・診断と治療
期外収縮の診断は、心電図(ECG)を使って行います。心電図では、心臓の異常な収縮のタイミングや頻度が記録されるため、どの程度の問題があるかが分かります。
もし期外収縮が頻繁に起こる場合や症状が強い場合、投薬での治療を行うことがあります。また、薬物療法が効果が薄い場合には、カテーテルアブレーションという治療法も考慮されます。


・注意すべき期外収縮

1日に何百回も発生する場合:頻発することで、心臓への負担が増し、他の不整脈が引き起こされることがあります。

めまい・息切れ・意識が遠のく感じがある場合:血流が低下し、脳や体に十分な酸素が届いていない可能性があります。

運動中や労作時に頻発する場合 :心筋虚血(心臓への血流不足)が関係している可能性があります。


このような場合は、一度病院で心電図やホルター心電図(24時間心電図)などを受けて、詳しい検査をしてもらいましょう。

 

 


今回は「期外収縮の概要」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は本題である「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。

セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と逆子④

2025.02.28 | Category: 妊娠中の鍼灸治療,鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「ご自宅で行えるセルフケア」についてお話させて頂きます。また、最後に今月更新分のブログに用いた参考文献を記載しますのでご参考までに。

 

◎ご自宅で行なえるセルフケア

セルフケアについてお話していく前に、まず逆子の基礎知識について再確認していきましょう!

逆子(骨盤位)とは、胎児の頭部が上向きとなり、骨盤が子宮口に向いた状態を指します。妊娠28週時点で約20%の胎児が骨盤位であるが、34週までに90%以上が自然回転します。しかし、34週を過ぎると自然回転の可能性は低下していき、38週を超えるとほぼ固定されます。

胎児の回転には以下の要因が影響を与えます。

 

・子宮内の環境(羊水量、子宮の形状、胎盤位置など)

・母体の筋肉の緊張状態(子宮周囲の筋群や骨盤底筋の柔軟性)

・胎児の運動性(胎動の強さと頻度)

 

そのため適切なセルフケアにより、母体の筋肉の緊張を和らげ、胎児が回転しやすい環境を整えることが可能と考えられます。

 

 ・体温調節と血流改善

子宮周囲の血流が不足すると、胎児の回転が妨げられる可能性があります。特に下肢や腹部の冷えは、骨盤内の循環を悪化させる要因となるため、以下のような対策が推奨されます。

 

・下肢の保温:靴下・レッグウォーマーの着用

 

・腹部の保温:腹巻きやカイロ(低温やけどに注意)

 

・温かい飲料の摂取:白湯、生姜湯、ハーブティーなど

 

・湯船での入浴:38〜40℃の湯温での全身浴(シャワーのみは避ける)

 

・逆子体操の実践

逆子体操は、胎児の重心を変えることで回転しやすい環境を作る事を目的として行われます。一定の有効性が報告されていますが、個人差がある為専門家との相談の上行う事を推奨します。

 

主な方法

・胸膝位(きょうしつい):四つん這いの姿勢から肘と胸を床につけ、骨盤を高く上げる(1回10〜15分、1日2〜3回)。

・仰臥位(ぎょうがい)ブリッジ:仰向けに寝た状態で腰の下にクッションを敷き、骨盤を高くする(10〜15分間保持)。

※担当医とご相談の上、行うようにしてください。

 

実施時の注意点

・お腹の張りを感じたら中止し、医師に相談する。

・切迫早産のリスクがある場合は禁忌

 

・鍼灸によるアプローチ

前回お話させて頂いた通り東洋医学では、経穴(ツボ)への刺激が胎動を促進し、逆子改善に有効であるとされています。

代表的な経穴とその位置

・至陰(しいん):足の小指の爪の外側

・三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上、指4本分の位置

鍼灸院で鍼灸治療を受けることは勿論、セルフケアとしてご自身でツボ押しやお灸をする事も◎です。もし場所や行い方が合っているか不安などご不明点があればスタッフへお声がけください!

 

・ 精神的リラックスと胎児への働きかけ

母体のストレスや緊張は、交感神経を優位にし、子宮周囲の筋肉の緊張を高める可能性があります。そのため、心身のリラックスを意識することが重要です。

有効とされる手法

・リラックスできる環境を整える:クッションや丸めたタオルを用いて座る姿勢を負担が少ないようにしたり、シムス位と呼ばれる妊婦さんにとって楽な体勢をとるようにしたり、動きやすく身体を冷やさないマタニティ服の着用を心掛けるなど心身ともにリラックスしやすい環境を目指しましょう。

 

・深呼吸や瞑想:深呼吸や瞑想(マインドフルネス)を行い、気持ちを落ち着ける習慣を付けましょう。特に妊婦さんは腹部の圧迫感から浅い呼吸になりやすいため、動悸や気分が落ち着かないなど多岐に渡る不快な症状の原因となる場合があります。

 

・適度な運動:ウォーキングや軽いストレッチ、ヨガなどにより、骨盤周囲の柔軟性を高めましょう。また適度な運動は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの予防にも繋がります。お近くに水泳が出来る施設などがあれば温水プールでの運動は関節への負担が少ない状態で出来るのでお勧めです。ただお帰りの際に体を冷やしやすい為、その点はご注意ください。

 

 

・逆子が改善しない場合の対応

妊娠34週を超えても逆子が継続する場合、医師との相談のもと、外回転術(ECV: External Cephalic Version)が検討されることがあります。これは、医師が手を用いて胎児を回転させる方法であり、成功率は60%程度と報告されています。

また、38週を過ぎても逆子が持続する場合、分娩方法の選択が必要となる。

 

逆子のセルフケアとして、身体を温めることや逆子体操、鍼灸、心身のリラックスなどが推奨されますが、セルフケアは医療機関の指導のもとで適切に実施することが重要です。また、逆子が治らない場合の対応についても、早めに医師と相談し、分娩方法の選択を進めることが望ましいです。

 

 

◎参考文献

日本産科婦人科学会(2023)『妊娠・出産の医学』

日本助産学会(2018)『助産学ハンドブック』

厚生労働省(2021)『妊娠期のセルフケアに関するガイドライン』

高橋真紀(2020)『妊娠と冷え:血流改善の重要性』

日本周産期医学会(2020)『妊娠中のストレス管理』

藤本幸子(2019)『東洋医学と妊婦ケア:鍼灸の臨床研究』

Cardini F, Weixin H. (1998). Moxibustion for correction of breech presentation: A randomized controlled trial. JAMA, 280(18), 1580-1583.

Van den Berg I, Kaandorp G, Bosch J, et al. (2008). Effectiveness of acupuncture-type interventions versus expectant management to correct breech presentation: A systematic review. Complementary Therapies in Medicine.

高橋徳治, 村田明美, 高橋健一. (2010). 妊婦の逆子に対する至陰の灸の有効性. 日本鍼灸医学会誌.

American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). (2020). Obstetric Care Consensus No. 13: Screening for Fetal Malpresentation.

Berhan, Y., & Haileamlak, A. (2016). The mode of delivery and perinatal outcomes in breech presentation.

Caughey, A. B., et al. (2018). ACOG Practice Bulletin No. 190: Management of Breech Presentation.

Cunningham, F. G., et al. (2022). Williams Obstetrics, 26th Edition.

Hofmeyr, G. J., et al. (2015). External cephalic version for breech presentation at term. Cochrane Database.

Liu, J., Zhang, Y., & Xu, Y. (2015). Acupuncture for breech presentation: A systematic review and meta-analysis. BMC Complementary and Alternative Medicine, 15(1), 140.

Stöckl, A., et al. (2015). The effectiveness of acupuncture for breech presentation: A prospective study. European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology, 191, 40-45.

Goswami, D., et al. (2013). Acupuncture for breech presentation at term: A randomized controlled trial. Australian and New Zealand Journal of Obstetrics and Gynaecology, 53(2), 173-177.

Zhou, H., et al. (2017). The efficacy of acupuncture in the treatment of breech presentation: A large-scale retrospective study. Journal of Traditional Chinese Medicine, 37(6), 802-808.

Wang, C., et al. (2018). Acupuncture for breech presentation: A randomized controlled trial. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2018

 

 

今週も読んで下さりありがとうございました。 今回は「ご自宅で行えるセルフケア」についてお話させて頂きました。
逆子についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?
もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!
来月からはまた新しい題材でブログを更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。

 

セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と逆子③

2025.02.21 | Category: 妊娠中の鍼灸治療,鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。

 

◎逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)

前回、世界で行われている逆子に対する鍼灸治療の臨床研究についてご紹介させていただきましたので、今回はその際に使われた経穴(ツボ)についてお話させていただきます。

 

・至陰

位置:足の小指外側の爪の付け根付近。

主な作用

胎児の回転を促進する

子宮や骨盤内の血流を改善する

ホルモンバランスを整える

 

前回ご紹介した臨床研究の中でも頻出していた「至陰」への灸治療は、妊娠30〜35週の妊婦を対象に行われることが多く、逆子の自然矯正を促す安全な方法として広く活用されています。

しかし、至陰への刺激のみで十分な効果が得られない場合もあります。そこで、補助として他の経穴を併用することで、より高い効果を期待できます。

 

・合谷

位置:手の甲、親指と人差し指の骨が交わるところのくぼみ。

主な作用

自律神経を調整 → リラックス効果により子宮の過緊張を緩和、胎児の回転を促す

ストレスや緊張を軽減し、副交感神経を優位にすることで血流を改善。

 

特に、ストレスや自律神経の乱れが影響している妊婦の方に対して、合谷への刺激は精神的な安定をもたらし、体の緊張を緩和する働きがあります。

 

基本的な施術手順

  1. 至陰(BL67)への灸治療(米粒大のもぐさを点火し、数回繰り返す)

  2. 合谷(LI4)への軽い指圧や鍼(自律神経の調整と気血の巡りを促す)

 

◎そのほかのお役立ち経穴(ツボ)

・太衝(たいしょう)

場所:

足の甲にあります。親指と人差し指の間の骨が交わるところから指を少し下にずらした部分です。具体的には、足の親指と人差し指の間の骨を感じながら、少し人差し指側の足の甲にあります。

効果:

腰痛や足の疲れ: 足をよく使う妊婦さんに特におすすめ。血流を促進するため、足のだるさやむくみを軽減するのに役立ちます。

消化器系の不調: 便秘や消化不良の改善にも効果的です。妊娠中に便秘に悩む方も多いため、このツボは有用です。

痛みの緩和: このツボは、痛みの緩和にも役立ちます。特に、筋肉の張りや痛みを和らげるとされており、妊娠中の体調管理に役立ちます。

 

注意点:

強く押しすぎない: 妊娠中に強い刺激を加えると、逆に体調を崩すこともあるので、押す際はあくまで優しく行いましょう。

妊娠後期には慎重に: 特に妊娠後期になると、過度な刺激が陣痛を引き起こす可能性があるため、自己治療を行う際は注意が必要です。

 

・風池(ふうち)

場所:

後頭部に位置します。髪の生え際で、首の付け根あたりにあります。頭を前に倒したときに、首の筋肉が引っ張られるあたりの筋肉のくぼみに位置します。首の筋肉が張っている感じがある場所です。

効果:

頭痛や目の疲れ: 風池は、頭痛や目の疲れを和らげる効果があります。妊婦さんはホルモンバランスや体調の変化で、頭痛や目の疲れを感じやすいことがあるため、このツボを押すことで軽減できる場合があります。

リラックス効果: 自律神経のバランスを整える働きがあり、リラックス効果が高いとされています。妊婦さんのストレスや不安を軽減するのにも役立ちます。

肩こりや首のこりの解消: 首や肩のこりを改善し、血流を促進します。特に妊娠中は姿勢が悪くなりがちなので、首や肩のこりが生じやすいです。風池を押すことでその緩和が期待できます。

 

注意点:

力加減に注意: 風池は、頭部に近い部分にあるため、強く押しすぎないように気をつけましょう。優しく指圧するようにします。

妊娠中期まで: 妊娠初期や後期に強い刺激を加えるのは避け、無理なく押すようにします。体調が良いときに軽く触れる程度で大丈夫です。

 

 

◎ポイント

  • 妊娠30〜35週の期間に行うのが最適

  • 施術後はリラックスし、体を温めることが重要

  • 自宅でのお灸を指導することもある(特に至陰へのセルフ灸)

→セルフケアの一環としておうちでお灸をやっていただけると一番良いのですが、ご自身でのお灸が怖い方は下半身を温めることや、体を冷やさないような食事を意識するだけでも◎(食養生やセルフケアに関しては次回詳しくお話させていただきますので、ぜひご覧ください!)

 

鍼灸治療は、逆子矯正において安全で効果的な選択肢の一つです。逆子と診断された場合は、専門の鍼灸師に相談し、自分に合った施術を受けることをおすすめします。

 

今回は「逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「ご自宅で行えるセルフケア」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 


セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と逆子②

2025.02.14 | Category: 鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「逆子に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。

◎逆子に対する鍼灸治療における臨床試験、またそのレビュー

前回はまず逆子に関するお話をするにあたって逆子の定義や種類についてお話させていただきました。
今回は、本題でもある鍼灸治療の効果の程にフォーカスを当ててお話させていただきたいと思います。


・逆子に有効とされる「至陰」のツボ
鍼灸で逆子の矯正を試みる際、最も重要なツボとされているのが「至陰(しいん)」です。今回ご紹介した研究の中でもほとんどが使用しています。今回は使用された経穴については割愛させて頂きますが、次回改めて記載させて頂きます。

場所: 足の小指の外側、爪の生え際
作用: 体内の気血の巡りを改善するとされる
至陰への灸治療を行うことで、胎動が活発になり、赤ちゃんが自然に回転しやすくなると言われています。


・鍼灸のメカニズム
では、なぜお灸が逆子の矯正に効果があるのでしょうか?

血流促進: お灸によって体、特に下肢や子宮の血流が改善し、体の冷えがとれることにより胎児が動きやすくなる
副交感神経の活性化: リラックス効果により、全身の過剰な緊張を和らげる
胎動の促進: 胎児の動きを促し、自然に頭位へ回転する可能性を高める


鍼灸の逆子矯正効果について、いくつか実際の研究を例にあげてみていきましょう。


・JAMA掲載のランダム化比較試験(Cardini & Weixin, 1998)
Cardiniら(1998)の研究では、妊娠33〜35週の逆子妊婦130名を対象に、至陰への灸治療を行ったグループ(65名)と、何もしなかった対照群(65名)を比較しました。

結果:

治療群(灸治療を行った群)の逆子矯正率は75%(49/65人)
対照群(何もしなかった群)の逆子矯正率は47%(31/65人)


研究者の見解:

灸治療が逆子矯正に有意に効果的であることを示したとし、鍼灸治療が逆子妊婦に対して非侵襲的かつ安全な選択肢となり得ることを強調しました。また、この治療法が、帝王切開を回避するための効果的な方法の一つとして注目されています。


・ Liuらによるシステマティックレビュー(2015)
Liuら(2015)の系統的レビューとメタアナリシスでは、鍼灸が逆子矯正において有意に効果があることが示されています。特に、至陰への灸治療が最も効果的であるとされています。

研究者の見解:

複数の研究データを統合し、鍼灸治療が逆子妊婦に対して有効であるというエビデンスを提供しました。彼らは、鍼灸が胎児の回転を促進するメカニズムについて更なる解明が必要だとし、鍼灸が他の治療法と比較して低リスクである点を挙げて、医療現場での積極的な利用を提案しています。


・イギリスの研究(Stöcklら, 2015)
逆子妊婦を治療群と対象群150名ずつ分けて鍼治療を行い、逆子矯正率を比較しました。

結果:

治療群の逆子矯正率は68%(102/150人)
対照群の逆子矯正率は40%(60/150人)

研究者の見解:

鍼治療が逆子妊婦に対して実際的かつ効果的な治療法であることを認め、その結果は他の非侵襲的な治療法と同等かそれ以上であるとしています。加えて、鍼治療は副作用が少なく、患者にとってストレスの少ない治療である点を評価しています。


・日本国内の研究(高橋ら, 2010)
日本国内で行われた高橋ら(2010)の研究でも、至陰への灸治療が逆子矯正に効果的であることが示されています。この研究では逆子妊婦を治療群と対象群65人ずつに分けて行われました。

結果:

治療群の逆子矯正率は60%(39/65人)
対照群の逆子矯正率は40%(26/65人)

研究者の見解:

高橋らは、鍼灸が逆子の矯正に一定の効果を持つことを示したとし、特に日本の産婦人科医の間でも鍼灸治療を取り入れる動きが広がりつつあることを指摘しました。ただし、全ての妊婦に対して効果があるわけではなく、個人差があることを考慮する必要があると述べています。

 

・オーストラリアの研究(Goswamiら, 2013)
逆子妊婦100名を治療群と対象群に分け、鍼灸治療を行いました。

結果:

治療群の逆子矯正率は80%(80/100人)
対照群の逆子矯正率は45%(45/100人)

 

研究者の見解:

鍼灸治療の高い効果を確認し、鍼灸が医療現場において逆子矯正の補完的手段として役立つ可能性があることを指摘しました。また、鍼灸治療がリスクが少ないことから、自然分娩を希望する妊婦にとって非常に有効な選択肢となり得ると結論付けています。

 


・オーストリアの研究(Wangら, 2018)
妊娠32〜36週の治療群と対象群逆子妊婦120名ずつを対象に鍼灸治療を施しました。

結果:

治療群の逆子矯正率は75%(90/120人)
対照群の逆子矯正率は50%(60/120人)

 

研究者の見解:

Wangらは、鍼灸治療の有効性を再確認し、鍼治療が逆子妊婦に対して非侵襲的な治療方法として非常に適していると述べています。また、鍼治療は妊婦にとって身体的負担が少なく、医師と連携しながら行うことで、安全性が確保される点も評価されています。

 

 

◎鍼灸治療を受ける際の注意点

鍼灸は比較的安全な治療法ですが、以下の点には注意が必要です。

医師と相談すること: 妊娠中の体調やリスクを考慮し、医師と相談の上で実施する

現在の研究では、至陰への灸治療が逆子の矯正に一定の効果を持つ可能性があることが示唆されています。ただし、すべての妊婦に有効とは限らず、個人差があることを理解した上で取り入れることが重要です。
「逆子だから帝王切開しかない」と決めつける前に、医師や鍼灸師と相談しながら、安全な方法で試してみる価値はあるかもしれません。

 


◎鍼灸以外で逆子治療に用いられる方法

 

・逆子体操
逆子体操は、胎児の向きを変えやすくするために行う体操で、一般的に妊娠30~34週頃に試みられます。ブリッジ法や胸膝位などが代表的ですが、子宮収縮を誘発する可能性があり、すべての妊婦さんに適しているわけではないため、医師と相談しながら行うことが大切です。


・外回転術(ECV)
外回転術(エクスターナル・セファリック・バージョン)は、医師が手を使って胎児を頭位に回転させる方法です。成功率は50~60パーセントとされていますが、胎盤剥離や臍帯巻絡のリスクがあり、また胎盤の状態や羊水量などによって適応が制限されることがあります。


・自然に戻るのを待つ
34週頃までは胎児が自然に回転する可能性があるため、無理に矯正を試みず経過観察することも選択肢の一つです。特に初産婦より経産婦の方が自然に頭位へ戻る確率が高いと言われています。

 

 

 

今回は「逆子に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 


セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と逆子①

2025.02.07 | Category: 妊娠中の鍼灸治療

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今月は鍼灸と逆子についてお話させて頂きたいと思います。

妊娠後期に入り、「赤ちゃんが逆子だと言われた…どうしたらいいんだろう…」と不安になる妊婦さんは少なくありません。一般的に妊娠30週以降になっても胎位が骨盤位(逆子)の場合、自然に頭位に戻る確率は徐々に低下するとされています。多くの妊婦さんは妊娠30~32週ごろに逆子の診断を受け、診断後から逆子体操や外回転術(ECV)を試みますが、それでも戻らないケースも一定数あります。
そんな中、近年注目されているのが鍼灸による逆子の矯正です。特に「至陰(しいん)」というツボへのお灸(灸治療)が逆子の改善に効果的だとする研究が報告されています。
今回はまず、逆子とは何か、定義や種類について学んでいきましょう。


◎逆子とは?

逆子(さかご)とは、医学的には「骨盤位(こつばんい)」と呼ばれる胎児の胎位の一種です。通常、妊娠後期には胎児の頭が母体の骨盤の方向に向く「頭位(とうい)」になりますが、逆子の場合は胎児の臀部や足が子宮口の方を向いたままの状態となります。
妊娠初期から中期にかけては、胎児が活発に動くため、一時的に逆子になることは珍しくありません。しかし、妊娠30週を過ぎると胎児の動きが制限され、逆子のまま固定される可能性が高まります。一般的に、妊娠30週で約15%の胎児が逆子ですが、妊娠34週には7~8%、最終的に外回転術が成功しなかった場合、分娩時には約3~4%の割合で逆子となると報告されています。


◎逆子の分類(種類)
逆子にはいくつかの種類があり、胎児の向きや足の位置によって分類されます。

・単殿位(たんでんい)

胎児のお尻が子宮口の方を向いており、足は上方(母体の頭側)に伸びている状態
逆子の中で最も一般的なタイプであり、約50~70パーセントを占める
経膣分娩が可能な場合もあるが、リスクが高いため帝王切開となるケースが多い


・全殿位(ぜんでんい)

胎児のお尻が子宮口に向いているが、足があぐらをかいたような姿勢になっている
頭位への回転が難しいことが多い


・足位(そくい)

胎児の片足または両足が子宮口に向いている状態
分娩時に足から先に出てしまうため、帝王切開が推奨される


・膝位(しつい)

胎児が膝を折り曲げた状態で膝が子宮口の方向に向いている
まれなタイプだが、分娩時のリスクが特に高いため、ほぼ帝王切開となる


◎逆子の原因
逆子の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関係していると考えられています。

・羊水が多すぎる(羊水過多)場合、胎児が過剰に動きやすくなる。反対に羊水が少ない(羊水過少)と胎児の回転が制限され、逆子のまま固定されやすい。

・双角子宮や中隔子宮などの子宮形態異常がある場合、胎児が自由に回転できず逆子になりやすい。これらの異常は超音波検査やMRIで診断される。

・前置胎盤や低置胎盤など胎盤の位置が低い場合、胎児が頭位に回転するスペースが制限されるため、逆子の原因となる可能性がある。

・染色体異常や神経系の発育異常(無脳症や水頭症など)がある胎児は、頭位への回転が困難になることがある。

・双子や三つ子などの多胎妊娠では、子宮内のスペースが限られるため、一方または両方の胎児が逆子になる確率が高い。

これらの要因が複雑に絡み合い、逆子が発生すると考えられています。

 


◎逆子のリスク
逆子の場合、多くの病院では安全を考慮し帝王切開を推奨しています。特に足位や膝位のように胎児の足や膝が先に出る形の逆子は、経膣分娩のリスクが高いため、ほぼすべてのケースで帝王切開となります。
一方、単殿位や全殿位の場合、医師の判断によっては経膣分娩が可能とされることもありますが、娩出時に胎児の頭が引っかかる可能性があるため、慎重な管理が必要です。

 

・胎児への影響
逆子のまま分娩を迎えると、胎児の頭が最後に出るため、十分な酸素を供給できない時間が長くなることがあります。そのため、低酸素状態や分娩遅延による影響が懸念されます。また、逆子の状態が長く続くことで、股関節脱臼(発育性股関節形成不全)を発症するリスクが通常の頭位の赤ちゃんよりも高くなることが知られています。そのため、逆子だった赤ちゃんは出生後に股関節のエコー検査などを受けることが推奨される場合があります。

 

今回は「逆子の定義と種類」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「逆子に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。


セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸とIBS(過敏性腸症候群)④

2025.01.27 | Category: 東洋医学,自律神経,鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴」「セルフケア」についてお話させて頂きます。また、最後に今月更新分のブログに用いた参考文献を記載しますのでご参考までに。
 
◎使用される経穴
前回はIBSに対する鍼灸治療の臨床研究についてお話させていただきましたので、その中で出てきた経穴、またそのほか消化器系に作用する経穴の場所と作用についてご紹介していきます。

・足三里(あしさんり)
位置: 膝の下にある外側の窪みから指4本下、脛骨の外側
効果: かの有名な伊能忠敬さんもお灸を据えていたと言われている胃腸機能を整える代表的な経穴で、胃腸の働きを整え腹部膨満感を軽減します。

・合谷(ごうこく)
位置: 手の甲、親指と人差し指の骨が交わるところ
効果: 自律神経の働きを整える際に用いられる代表的な経穴です。それに伴い消化器の症状やストレスを緩和する効果が期待できます。

・太衝(たいしょう)
位置: 足の甲、第1趾(親指)と第2趾(人差し指)の間のくぼみ
効果: 血流の改善、筋肉の緊張やストレスの緩和、肝(ストレスからの影響を最も受けやすい五臓六腑)の気を調整し、全身のエネルギーの巡りをよくする。

・内関(ないかん)
位置: 手首の中央から指3本分上(肘側)
効果: ストレスや不安を和らげ、消化器の症状の緩和や自律神経を調整する作用があります。それに伴い睡眠の質の向上も期待できます。

・百会(ひゃくえ)
位置: 頭のてっぺん、両耳を結んだ線と正中線の交点
効果: 副交感神経を活性化し、自律神経のバランスを整える効果があります。精神を落ち着かせる作用に加え、血流促進による全身の代謝機能向上が期待されます。

・天枢(てんすう)
位置: 臍から指3本外側(左右)
効果: 消化機能の調整に使われる代表的な経穴です。

・公孫(こうそん)
位置: 足の親指の付け根のふくらみから指で骨をなぞっていき、指が止まる部分(凹んだ部分)
効果: 胃腸機能の改善や腹痛の緩和が期待できます。

・上巨虚(じょうこきょ)
位置: 足三里から指4本分下
効果: 消化機能の調整、自律神経のバランス改善、腸の運動機能の正常化が期待できます。

・神門(しんもん)
位置: 手首にあるしわを指で小指側に軽くなでていき骨(豆状骨)の出っ張りの手前で指が止まる部分
効果: 不眠やイライラなど心の安定やストレス緩和に使われる代表的な経穴です。

・関元(かんげん)
位置: 臍から指4本下
効果: 下腹部の気血を整え、内臓機能を改善する効果や、自律神経のバランスを整え、ストレス緩和が期待できます。
 
・中脘(ちゅうかん)
位置: 臍から指4本上
効果: 「胃の中央」という意味からこの名前が付けられた経穴で、腸の運動や消化吸収を調整する効果が期待できます。
 
 ・腎兪(じんゆ)
位置: 第2腰椎から指2本外側
効果: 全身のエネルギーの流れを整える際に使われる経穴です。腰痛にも効果◎

・脾兪(ひゆ)
位置: 第11胸椎と第12胸椎の間の高さから指2本外側
効果: 内臓機能の改善に使われる代表的な経穴です。腰痛にも効果◎

・壇中(だんちゅう)
位置: 胸の中心、乳頭を結んだ線の中央
効果: 心臓のちょうど前面にあたる経穴です。呼吸を整え心を落ち着ける作用があり、ストレス緩和にも効果的です。

・三陰交(さんいんこう)
位置: 足首の内側、内くるぶしから指4本上
効果: 下肢の血流改善効果が期待でき、冷えなどの刺激から起こる消化器症状の予防に役立ちます。

 
◎セルフケア
次に食養生の観点からセルフケアについてお話させていただきます。

・スパイス
冷え性を伴う便秘や停滞腸に効果的な作用を持つ、体を温めてくれるスパイスや、胃腸の働きを高めてくれる作用を持つものをご紹介していきます。

ジンジャー、ペパーミント、シナモン、ターメリック、クローブ、コリアンダー、ローリエ、サフラン など

※症状悪化の原因となる場合がありますので適量の摂取を心掛け、決して過剰摂取にならないようご注意ください

 

・消化の良い食物
脂っぽいものや過度に食物繊維の多いもの、人工甘味料が多量に使われたもの、蕎麦やコーヒーなど、身体に悪影響を及ぼす食物は想像に容易いですが、その逆はなかなか想像しにくい方が多いのではないでしょうか?一例として以下に消化の良い食物をあげていきます。体質などにより個人差があるため、あくまで参考としてご活用ください。自分に合った食生活を見つける一助となれましたら幸いです。

植物油、脂肪分の少ない魚(かれい、たら、たい、ひらめ、すずきなど)、脂肪分の少ない肉(ソーセージなどの加工肉を除くヒレ肉類、鶏肉など)、白身魚、煮野菜(かぶ、にんじん、大根、カリフラワー、キャベツ、ほうれん草など)、白湯、麦茶、みそ汁やスープ(海藻類は避け、消化に良い具を使いましょう)、たまご、やまいも、きな粉 など

 


 
◎参考文献
Liu, X., et al. (2018). Effects of acupuncture on blood glucose in type 2 diabetes mellitus patients: A randomized controlled trial. Journal of Diabetes Research.
Sun, Y., et al. (2019). Acupuncture for diabetic peripheral neuropathy: A clinical study. Pain Medicine.
Zhao, L., et al. (2021). Systematic review and meta-analysis of acupuncture for diabetes. Complementary Therapies in Medicine.
Kim, T. H., et al. (2020). “Acupuncture for the treatment of diabetes mellitus: A systematic review and meta-analysis.”
Diabetes Research and Clinical Practice, 159, 107982. Cho, W. C., & Chen, H. Y. (2009). “Clinical efficacy of acupuncture on diabetes mellitus: A meta-analysis.”
Journal of Acupuncture and Meridian Studies, 2(4), 263–265.
Lee, M. S., et al. (2009). “Acupuncture for treating peripheral diabetic neuropathy: A systematic review.”
The Clinical Journal of Pain, 25(5), 431–437. International Diabetes Federation (2021). IDF Diabetes Atlas (10th Edition).
中国中医科学院. (2015). 鍼灸学概論. 北京科学技術出版社.
日本糖尿病学会
厚生労働省
国際糖尿病連合(IDF)
アメリカ糖尿病学会(ADA)
日本医師会「生活習慣病予防と糖尿病」 日本糖尿病学会編『糖尿病治療ガイドライン 2023』(文光堂)
WHO(世界保健機関)
Standards of Medical Care in Diabetes – 2024.Diabetes Care. 国立研究開発法人国立国際医療研究センター『糖尿病の基礎知識』
松生恒夫『「腸ストレス」を取り去る習慣』
 

 
◎最後に
鍼灸治療は補完療法として非常に有望な選択肢ですが、個々の患者に合わせた適切な診断と施術が求められます。また、鍼灸治療は現段階ではあくまで補助療法的な位置づけにあり、薬物療法や食事療法と組み合わせて活用することが重要です(重症度があがれば上がる程、これに該当します)
専門家との連携を取りながら、西洋医学と東洋医学を融合させより効果的な治療を目指していきましょう。
 
 

今週も読んで下さりありがとうございました。 今回は「鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴」「参考文献」「セルフケア」についてお話させて頂きました。
IBS(過敏性腸症候群)についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?
もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!
来月からはまた新しい題材でブログを更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。

今週も読んで下さりありがとうございました。

 

セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木

鍼灸とIBS(過敏性腸症候群)③

2025.01.24 | Category: 自律神経,鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。

 

◎ IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー

IBSの治療は薬物療法や生活指導を中心として行われますが、近年、補完医療として鍼灸治療が注目されています。
以前のブログで過敏性腸症候群(IBS)は、便通異常(下痢、便秘、あるいはその両方)を主な症状とした腹痛や腹部不快感を伴う慢性的な消化管疾患であること、脳と腸の密接な関係、またそれに伴って身体的な側面のみならず、精神的な側面にも影響を及ぼすことについてお話させて頂きました。
今回は自律神経系、また内分泌系への鍼灸の作用に焦点を当て、IBSに対するそれぞれの臨床研究をみていきましょう。
まず前置きとして用語について解説しておきます。

・試験方法について

鍼灸の効果を評価する為にランダム化比較試験(RCT)や準ランダム化比較試験(CCT)などの試験方法を用いた研究が広く世界で実施されています。
ランダム化比較試験(RCT)・準ランダム化比較試験(CCT)とは、個人の背景因子の偏り(交絡因子)をできるだけ小さくし、ある試験的操作を行うこと以外は公平になるように対象の集団を無作為に複数の群に分け、その試験的操作の影響と効果を測定し、明らかにするための比較研究です。薬物や治療法を適正に評価するための方法として、よく採用される試験方法です。

・メタアナリシスとは

メタアナリシス研究とは、前述したランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に結合させる統計学的研究手法です。ひとつひとつの研究の結果が矛盾している場合でも、たくさんの研究結果を解析することで、より総合的な評価をすることができます。

 

◎IBSに対する鍼灸治療の臨床研究

研究例1:Wang et al.(2020年)の研究では、IBS患者120名を対象に、鍼治療が症状改善に及ぼす影響を調査しました。この研究では以下のようなグループ分けと施術が行われました。

治療群:
主要な経穴(天枢、大腸兪、足三里など)を対象に週3回、計8週間の鍼治療を実施。

対照群:
偽鍼(皮膚に針を刺さない治療)を使用。

治療終了後、治療群ではIBS症状重症度スコア(IBS-SSS)による腹痛スコアや主観的な生活の質(QOL)が大幅に改善し、症状の再発率も低下しました。一方、対照群では有意な変化が見られませんでした。この結果から、鍼治療はIBS症状の緩和に有効である可能性が示唆されました。


研究例2:Zhao et al.(2019年)は、鍼灸がIBS患者の自律神経機能に与える影響を研究しました。IBSは脳腸相関の乱れが発症の一因とされており、自律神経系へのアプローチが重要視されています。研究では、特定の経穴(内関、足三里、関元)への鍼刺激が迷走神経を活性化し、交感神経と副交感神経のバランスを整えることで、腹痛や不安感が軽減されることが確認されました。

 

◎システマティックレビューとメタアナリシス

複数の臨床研究を統合的に分析したレビューやメタアナリシスも進められています。
Sun et al.(2021年)は、IBS患者を対象とした15件のRCTを分析し、以下の結果を報告しました。
主要な成果:
鍼灸治療を受けた群では、腹痛や便通異常の改善が対照群と比較して有意に高いことが確認されました。また、患者のQOLスコアも向上しました。
限界点:
偽鍼を用いた研究の不足やサンプルサイズのばらつきが、エビデンスの強度を制限する要因とされました。

・鍼灸がIBSに与える長期的効果
Lin et al.(2022年)のレビューでは、鍼灸の治療効果が短期的な症状緩和に留まらず、継続的な施術により症状の再発率が低下する可能性が示唆されています。特に、副腎皮質ホルモンやセロトニンの調節作用がIBSの慢性症状改善に寄与するメカニズムとして挙げられています。

 

◎鍼灸の生理学的メカニズム

鍼灸がIBS症状を改善する可能性があるメカニズムは、以下のように考えられています。


・脳腸相関の調整
鍼灸を用いた施術によって迷走神経や中枢神経系を刺激することで、腸管運動を正常化し、腸内環境の安定化を図ります。


・抗炎症作用
IBSでは腸粘膜の軽度な炎症が観察されることがあり、鍼灸が炎症性サイトカイン(例:IL-6やTNF-αなど)の産生を抑制することで、炎症を軽減する効果が期待されています。


・心理的ストレスの軽減
IBSはストレスが引き金となることが多く、鍼灸によるリラクゼーション効果がストレスホルモン(コルチゾール)の低下をもたらすことで、症状の緩和が図られると考えられています。

 

IBSに対する鍼灸治療は、症状緩和やQOLの向上に有効であることが臨床研究やレビューから示されています。特に、自律神経系への作用や抗炎症効果、心理的ストレスの軽減といった多面的な効果が注目されています。しかし、研究デザインや標準化の課題が残されており、今後のさらなる研究が期待されます。IBS患者の治療選択肢を広げるために、鍼灸が補完医療の一つとして確立される日が近づくことを願っています。

また、鍼灸治療は現段階ではあくまで補助療法的な位置づけにあり、薬物療法や食事療法と組み合わせて活用することが重要です。(重症度があがれば上がる程、これに該当します)

専門家との連携を取りながら、西洋医学と東洋医学を融合させより効果的な治療を目指していきましょう。


 

今週もお読み下さりありがとうございました。 今回は「IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療における臨床研究とそのレビュー」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
鍼灸は肩こりや腰痛など、筋肉に対してのアプローチが得意だというイメージをお持ちの方は今回の内容を少し意外に感じられたのではないでしょうか。鍼灸が得意とする自律神経へのアプローチは、刺激を介して内臓、ホルモン系へ作用することが出来ます。こちらを踏まえ、次回は「鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴」に関してお話させて頂きます。セルフケアについても触れていきますので、診断までとはいかずとも消化器系のお悩みをお持ちの方の参考になれば幸いです。

 

セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸とIBS(過敏性腸症候群)②

2025.01.17 | Category: ストレス,自律神経,鍼灸

こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「IBS(過敏性腸症候群)と心の繋がり脳腸相関」についてお話させていただきます。
前回の内容を踏まえ、中でも原因の一つであるストレスと脳腸相関の関係について掘り下げていきますので、もし前回の内容をお読みになっていない方は是非ご覧になってからこちらをお読みください。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。


◎ IBS(過敏性腸症候群)と心の繋がり、脳腸相関
IBSにおいて特に注目すべき点は、IBSが心と体の両方に影響を及ぼす疾患であるということです。これを理解するために、脳と腸がどのように関わり合っているのかを今回はお話していきます。
前置きとして前回の内容を引用させて頂きますが特に症状による精神面への影響は計り知れません。
IBSは、身体的な不快感だけでなく、「また症状が出るのではないか」という不安が常に心の中に蔓延り、生活の質(QOL)を招いてしまいます。これにより、以下のような影響が見られます。
・社会活動や外出への恐怖感
・仕事や学業への集中力の低下
・抑うつや不安障害の併発
これらの心理的要因がさらに症状を悪化させ、症状に対するストレスが更に症状の悪化を引き起こすという悪循環が生まれてしまいます。
症状改善の為には多面的なアプローチと包括的なケアが必要とされます。腸の過敏性の改善を目指した治療が主流ですが、心理的なサポートや腸内環境を整えることも欠かせません。


・脳腸相関
前述の通りIBSは患者へ大きなストレスを与えます。そしてそのストレスは脳、そして体全体にも影響を及ぼしているのです。
脳と腸は深い関係にあり、腸は「第二の脳」と呼ばれることがあります。実際、腸には「腸管神経系(ENS: Enteric Nervous System)」という独自の神経ネットワークが存在し、脳と密接に連絡を取り合い、情報共有を行っています。このつながりは「脳腸相関」と呼ばれ、腸が単なる消化器官以上の役割を果たしていることを示しています。
たとえば、ストレスを感じたときにお腹が痛くなったり、緊張でトイレが近くなったりするのは、脳腸相関の一例です。これは脳が自律神経を介して腸にストレスを受けたという刺激を伝えるからです。逆に、腸に病原菌が感染すると、脳で不安感が増すとの報告もあるそうです。
IBSでは、この脳腸相関のバランスやその仲介役となっている自律神経のバランスが崩れることで、症状が引き起こされると考えられています。そしてこれらのバランスを崩してしまう大きな原因の一つとして ストレス があげられます。ストレスが及ぼす脳への悪影響の一例として、ストレスホルモン(コルチゾール)の過剰分泌や幸せホルモン(セロトニン等)の分泌低下があげられます。特に幸せホルモンの分泌低下は精神面への影響が大きく、気分の落ち込みや何かしようとする意欲の低下、自己肯定感の低下などがあげられます。
セロトニン不足への対応策としては
・栄養バランスの良い食事
・セロトニンの合成に必要な必須アミノ酸であるトリプトファンを含む食品の摂取
・日光浴
・良質な睡眠
・適度な運動
などがあげられますが運動は特に効果的とされており、有酸素運動やリズム運動はその中でも有効性が高いです。2024年10月に更新しましたブログ「鍼灸と月経前症候群(PMS)④」の中で詳しくご紹介させていただいておりますので、併せてお読みいただけますと幸いです。

・腸内環境
腸内環境について前回も少しお話させて頂きましたが、実は腸内環境は脳腸相関に深く関わっています。腸内細菌叢(腸内フローラ)が乱れてしまうと、脳腸相関によって腸から脳へ悪い影響を与える可能性があります。短鎖脂肪酸の減少や便秘や下痢などの消化器系の症状の他、肌荒れやアレルギー、慢性的な身体の不調、うつ症状など全身へ影響を及ぼします。
そのため、IBSの治療には、腸内環境を整えることも重要とされています。


◎IBSと生活の質(QOL)
IBSが患者の生活に与える影響は非常に大きいです。腹痛や便通異常といった身体的症状だけでなく、日常生活や社会活動においても多くの制約が生じます。 前回少しお話させて頂きましたが、具体的にどういったケースがあるのか見ていきましょう。

1. 仕事や学業への影響
突発的な腹痛や下痢のために、外出が不安になったり、会議や授業など日常生活で必要なことに集中できなくなることがあります。また、頻繁なトイレの使用自体がストレスとなることも少なくありません。

2. 対人関係への影響
外食や旅行など、社会的な活動を楽しむことが難しくなる場合があります。外見からわからない分周囲の理解を得にくい疾患であることから、孤独感を感じる方も多いとされています。

3. 心理的負担
IBSの症状が慢性的に続くと、「また症状が出るかもしれない」という不安や抑うつ状態に陥ることがあります。このような心理的要因がさらに症状を悪化させるという悪循環も、IBSの特徴の一つです。

 

月末のブログではこれらに対するセルフケアについて取り扱う予定ですので、そうぞお付き合いください。

 

今週もお読み下さりありがとうございました。
今回は「IBS(過敏性腸症候群)と心の繋がり、脳腸相関」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させていただきます!

セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

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