


みなさんこんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です!
10月の中旬から下旬にかけて急激に気温が下がり、体調を崩す方が増えてきましたね。空気の乾燥も進み、のどや皮膚の不調、冷えによる肩こりや腰痛など、冬に特有の体調変化が見られる季節です。みなさまはいかがお過ごしでしょうか?
インフルエンザ流行のピークは例年12月下旬〜翌年2月頃とされていますが、2025年は10月の時点でインフルエンザ疑いの方が9000人に上り、例年より早く流行が始まっています。また百日咳も増加傾向にあり、日本健康安全保障研究所(JIHS)の最新データによると、8月10日の時点で今年の症例数は64,467件と、2024年全体の15倍以上に達しました。
感染症や寒さによる不調を予防するためには、「冬の過ごし方=養生」がとても重要です。今回は、東洋医学の視点からみた「ためる季節」冬の過ごし方について詳しくご紹介します。
東洋医学では、季節と臓腑には深い関わりがあるとされます。春は肝、夏は心、秋は肺、そして冬は腎にあたります。腎とは単なる腎臓だけでなく、「生命エネルギーの根本(腎精)」を蓄える重要なシステムです。腎精は成長・発育・生殖・老化・免疫など、人間が生命を維持する為の根幹に関わります。
そして一年のサイクルをその季節ごとに一文字で表すと春は「生」、夏は「長」、秋は「収」、そして冬は「蔵(ぞう)」となります。春に植物が芽吹き生まれ、夏は青々と枝葉を伸ばし、秋には実った食物を収穫し、冬を越すために収穫した食物を貯蔵する。
つまり、冬はエネルギーを外に出すのではなく、「内に溜め、守る」ことが重要な時期と表現することが出来ます。
現代人の多くは、冷え・疲労・睡眠不足・ストレスなどによって、この「蔵」の働きが乱れがちです。慢性的な疲労感や冷え、むくみ、腰痛なども「腎虚(じんきょ)」という腎が弱っているサインです。
特に腰や下腹部を冷やすことは腎を傷める原因になります。腹巻き、レッグウォーマー、温かい飲み物などで体の中心を温めましょう。体を「冷やさないこと」は、冬の最大の予防です。
また、足湯や温灸などで「下半身を温め、上半身を緩める」ケアも効果的です。腎の経絡は足裏から腰まで走るため、足元を温めるだけでも全身の血流が改善し、自律神経のバランスも整いやすくなります。
『黄帝内経』には「冬は早く寝て、日が昇ってから起きる」と記されています。これは、自然のリズムに合わせてエネルギーを「蓄える」ことの重要性を説いた教えです。
特に冬は日照時間が短くなるため、メラトニンという睡眠へと導く作用を持つホルモンの分泌が早まります。これによって脈拍・体温・血圧などが低下し体が睡眠の準備を早く行ってしまうのです。冬場に眠気が強くなる方はこのケースが多いです。
そのため夜更かしやブルーライトの刺激によってメラトニンの分泌リズムを乱してしまうと、睡眠の質が低下し、免疫力や代謝が下がります。湯船に肩までつかることや照明の明るさを落とす、スマホをの使用を控えるなど、夜の「静」の時間を大切にしましょう。
就寝前のおすすめ習慣は、40度前後のお湯に10〜15分ゆっくり浸かって全身の血流を促し、副交感神経を優位することです。布団に入る1時間~2時間前の入浴は睡眠時に最適な体温に近付けるため、より上質な睡眠につながります。入浴後は白湯で体内を潤し、心身を温めてから布団へ入りましょう。
また、休日に寝だめをするのではなく、起床時間を一定に保つことも腎を守るポイントです。お休みの日でも普段の生活リズムを乱さず、整えることが「ためる力」につながります。
冬の食養生では、「温める」ことと「腎を補う」ことを意識しましょう。東洋医学で腎は「黒」と対応し、黒い食材は腎を助けるとされています。黒ごま・黒豆・ひじき・海苔・昆布・きくらげなどは、カリウムや鉄などのミネラル・食物繊維・抗酸化物質などが豊富にふくまれており、髪や骨、ホルモンバランスの維持にも役立ちます。
また、羊肉・鶏肉・生姜・にら・にんにく・ねぎなどの「陽性食材」は体を内側から温めてくれます。特に鍋料理は冬の理想的な食養生。根菜類や薬味を加えて、栄養と温かさを両立させましょう。
注意点として、唐辛子やにんにくを過剰に摂ると体内の「陰」を少なくしてしまい、のぼせや乾燥の原因になり、また胃腸の疲れにもつながる場合があります。体を温めてくれる印象の多い食物ですが、刺激物は冷え性の方でも控えめにし、体調に合わせた温め方を心がけましょう。
そして冬に不足しがちなのが「潤い」。大根・白菜・れんこん・白きくらげなど、水分を補う食材を取り入れることで、肌や粘膜の乾燥も防げます。温かいスープやお粥で「温と潤」を両立するのが理想です。
冬は自然界の動きが静まり、生命が内へ籠る季節です。人の心もまた、「静」を保つことが求められます。心が常に外に向かい、焦りや不安を感じる状態は、腎精を消耗させてしまいます。
心を整えるには、「ゆっくりする勇気」が必要です。読書・深呼吸・温かい飲み物を味わう・静かな音楽を聴くなど、五感を休ませる時間を持ちましょう。特に寝る前の10分間はデジタルデトックス(スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスとの距離を置くこと)を行い、自分と向き合う穏やかな時間を作ることが、冬の養生になります。
また、東洋医学では「恐」は腎の感情とされます。過度な心配や恐れは腎を傷めます。意識的に安心感を持ち、「まあいいか」と受け流すことも、心の健康にとって大切なスキルです。
焦らず、ため込みすぎず、「今の自分を受け入れる」こと。それが春への準備になります。
冬は頑張る季節ではなく、「休む季節」です。外に向かうよりも、内側を整えること。これが春の健やかな芽吹きを生み出します。冷えを防ぎ、腎を養い、静けさを大切にすることが、東洋医学の「冬の智慧」です。
鍼灸や食養生を通して、自分の体の声を丁寧に聞く時間を持ってください。冬の静寂を味方につけることで、次の季節をより軽やかに迎える準備が整います。
今回のブログはいかがでしたでしょうか?もしもっと詳しく聞きたい、ここがわからない等ございましたら是非お気軽にスタッフまでお声がけください!
次回は経穴(ツボ)を用いたセルフケアについてお話させていただきますので、お読みいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木
みなさんこんにちは!セドナ整骨院 千葉駅前院の佐々木です。
前回に続き、今年6月に当院で行われた健康セミナーでご紹介させていただいたご自宅での心のセルフケアについてお話しいたします。
日々の生活の中で、私たちは気づかないうちに多くのストレス刺激にさらされています。
しかし、その「ストレス反応」は必ずしも悪者というわけではありません。私たちの身体が本来持っている“自分を守るための仕組み”なのです。
実践の前に、まずストレスによって起こる反応の種類をみていきましょう。セミナーでは3つの主要な反応を解説しました。
1.闘争・逃走反応
危険に直面したとき、心拍数が急激に上がり、血管が収縮して筋肉へ血流が集中する反応です。
瞬時に体を動かすためのエネルギーを引き出すもので、会議や試験、初めての場所での緊張などもこの反応にあたります。
特に適度な緊張は集中力を高め、私たちの能力を最大限に引き出してくれます。
2.チャレンジ反応
困難に立ち向かうときに生じる前向きなストレス反応です。心拍数は上がりますが、血管は収縮せず拡張するため、脳にしっかりと酸素が届きます。その結果、行動に完全に没頭し、時間を忘れて集中できる状態、いわゆる「ゾーン」に入る感覚が生まれます。スポーツ選手やアーティストにも多く見られる反応です。
3.思いやり・絆反応
強いストレスを感じると分泌される“オキシトシン(幸せホルモン)”によって、人とのつながりを求める気持ちが高まります。
そして誰かに相談したり、支え合ったりすることで、心身の回復が促進されます。
(つまり「一人で抱え込まない」ことが、ストレス対策として非常に効果的です。)
これらは本来、私たちを守り、能力を発揮させるためのシステムです。問題はこれらの「自分の体の反応をどう解釈するか」。例えば、心臓がドキドキしているときに「このまま倒れるかも」と恐れるか、「力を出す準備が整ってきた」と受け止めるか。この“認知の違い”が、体の働きやパフォーマンスを大きく左右します。
セミナーでは、この認知を変えるための実践トレーニングを体験していただきました。
ご自宅でも簡単にできる方法を、改めてご紹介します。
1.言語化トレーニング
今自分が感じている感情を声に出したり、紙に書いたりして「私は今緊張している」「私は今怖がっている」などと言葉で表現します。このように言語化することで自分が今どんな状況下に置かれているのか、今どんな感情を持っているのか客観視しやすくなり、脳が冷静さを取り戻すことが研究でわかっています。
2.ダブルインヘール
呼吸をする際に息を可能な限り深く吸い、吸い終わったあとでもう一段階深く吸い込みます。これは「ダブルインヘール」と呼ばれる呼吸法で、数回繰り返すだけで副交感神経が優位になり、心拍が整います。緊張時はとくに呼吸が浅くなりやすいため、夜寝付きが悪い時などぜひ試してみてください。
3.マインドフルネス瞑想
「今この瞬間」に意識を集中させ、過去や未来の不安から一時的に心を切り離す練習です。
静かな場所で目を閉じ、約5分間、自然な呼吸を繰り返します。
目は開いていても閉じていてもどちらでもよいです。呼吸や体の感覚に意識を向けるだけでも構いません。雑念が浮かんでも「今、考え事をしているな」と気づくだけでOK。無理に止めようとしないのがコツです。
ご紹介させていただいたセルフケアはどれも特別な道具や長い時間などは必要なく、自宅や職場でも簡単に取り入れられます。実際にセミナーに参加された方々からは
「最近寝付きの悪さが気になっていたけれど、マインドフルネス瞑想をやり始めてから寝付きが良くなった」
「仕事中ドキドキした時に試したら落ち着けた」
といった実感の声が多数寄せられました。このブログをお読みになっているみなさんもぜひお試しください!
またもし「ここがわからない」「どうやったらいいんだろう」など今回のブログ内容についての疑問、「このストレスにどうやって向き合ったらいいんだろう」などの日常生活でのご相談がございましたらスタッフへ気軽にお話くださいませ!
次回の健康セミナーは12月14日開催予定です。
テーマは『アンガーマネジメント・怒りとの付き合い方』
日頃、私たちは仕事や家庭、人間関係の中でさまざまな感情を抱えながら生活しています。うれしい、悲しい、不安、そして怒り、これらは誰もが持つ自然な心の反応です。しかし忙しい日常の中では、自分の感情にきちんと目を向ける時間が取れず、気付かないうちに体や心に大きな負担をかけてしまうことがあります。
当院では、こうした「感情と身体のつながり」を患者様ご自身に理解していただき、日々の健康管理にに役立つ知識とセルフケアを、実践形式でお届けします。
体のサインを学び、自分自身を守る力を一緒に身につけませんか?ぜひお誘い合わせのうえ、ご参加ください。
参考文献:
『Neuropsychologia』References:‘Flow state’ uncovered: We finally know what happens in the brain when you’re ‘in the zone’ | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
スタンフォードのストレスを力に変える教科書:McGonigalKelly
みなさんこんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です!
夏の暑さもようやくひと段落。朝晩冷える日が増えてきましたがいかがお過ごしでしょうか?
今回は6月に千葉駅前院で行われた”健康セミナー”の内容を一部抜粋してご紹介させていただきます!
※健康セミナーとは?
→1か月ごとにセドナ治療院グループの千葉駅前院、ユーカリが丘本院、八千代村上院、公津の杜院、浦安院の各5店舗で順番に行われている患者様向けの体についての勉強会です。
今回の題材は「ストレス」
「ストレスって、体に悪いと思いますか?」と問いかけられた時、多くの方が「もちろん悪いに決まっている」と感じるかと思います。肩こり、頭痛、胃の不調、血圧の上昇。日常の中でストレスを感じると、私たちはすぐに体の不調と結び付けてしまいます。しかし、今回のブログで皆さんにお伝えしたいことは、ストレスは必ずしも“悪者”ではないという意外な事実です。
米国で3万人を対象に行われた大規模調査では、ストレスを強く感じている人の中でも「ストレスは体に害がある」と信じている人ほど死亡リスクが高く、一方で「ストレスは自分を成長させるもの」と前向きに捉えている人では死亡リスクが低いという結果が報告されています。つまり、ストレスそのものよりもストレスに対する認知が健康を左右する、ということが科学的に示されているのです。
私たちが緊張したときに心拍数が上がったり呼吸が速くなったりするのは、体が危険に備えてエネルギーを供給しているサイン。これは「闘争・逃走反応」と呼ばれ、生命を守るために必要な生理現象です。本来は遥か昔、原始時代に敵から逃げるために発達した反応ですが、現代ではプレゼンや試験、人間関係など社会的ストレスにおいてこのような反応が起こります。
ここで重要なのが「認知の再構成」という考え方です。このような反応が起こった時、例えば心拍数が上がったとき、「もしかしたら心臓に病気があるのかも」など不安にとらえるとストレスホルモンが過剰に分泌され、血管が収縮して体に負担がかかります。逆に「これは体が力を発揮するための準備だ」と捉えることが出来ると、血管が拡張し、同じ緊張でも体へのダメージが少なくなることが分かっています。
このようにストレスを味方につけた実例として、トップアスリートの方々を想像してみましょう。オリンピック選手や舞台俳優は、大舞台の直前、もしくは最中に必ず緊張を感じます。しかし彼らはその緊張を「失敗するかもしれない不安な状態」ではなく「最高のパフォーマンスを出すための状態」と捉えています。そのため極度の緊張状態の中でもいつも通りのパフォーマンスを発揮し、集中力を途切れさせない状態を維持できるのです。
このように、ストレスを単なる“敵”ではなく“味方”に変える視点は、私たちの日常でも活用できます。仕事、子育て、人間関係など、緊張する場面こそ「体がストレスに対応するための準備をしてくれている」と意識するだけで、日常生活での体、そして精神面への負担が軽減されます。
健康セミナーではこうした最新の知見をわかりやすく解説しながら、日常生活に活かすための思考の変換のヒントや簡単なセルフケアを実際に体験していただきました。
次回のブログでは健康セミナーで行われたセルフケアについての内容をご紹介させていただきますのでお読みいただけますと幸いです!

※6月の健康セミナー開催時の告知ポスターです!
セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木
参考文献:スタンフォードのストレスを力に変える教科書:McGonigalKelly
こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「期外収縮に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)」についてお話させていただきます。また今月のブログで使用した参考文献も最後に記載しておりますのでどうぞご覧ください。
前回、期外収縮に対する鍼灸治療の臨床研究についてご紹介させていただきましたので、今回はその際に使われた経穴(ツボ)の位置や効能についてお話させていただきます。
また、鍼灸と期外収縮②でご紹介した東洋医学的な観点からの治療で使う経穴についてもお話していきたいと思います。最後までお付き合い頂けますと幸いです。
【臨床研究で使われた経穴】
・内関(ないかん)
位置: 腕の中央、手のひらを上にして、手首の横じわから指3本分上
効能: 心悸亢進(動悸)、胸痛、胃の不快感、乗り物酔い、自律神経の調整
・心兪(しんゆ)
位置: 背中の第5胸椎棘突起の両側、指2本分外側
効能: 心臓の機能調整、動悸、息切れ、不眠、精神安定
・神門(しんもん)
位置: 手のひらを上にして、手首のシワの小指側にある窪み
効能: 動悸、不眠、精神安定、自律神経の調整
・足三里(あしさんり)
位置: 膝の下、脛骨(すねの骨)の外側、膝蓋骨(膝のお皿)の下から指4本分下
効能: 胃腸の調整、倦怠感の改善、免疫力向上、自律神経の調整
・百会(ひゃくえ)
位置: 頭頂部、両耳を結ぶ線と正中線の交点
効能: 自律神経の調整、精神安定、めまい、頭痛、不眠、眼精疲労、肩こり
・太渓(たいけい)
位置: 内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ
効能: 腎の機能調整、むくみ、冷え症、腰痛、のぼせの改善
・厥陰兪(けついんゆ)
位置: 背中の第4胸椎棘突起の両側、指2本分外側
効能: 心臓の血流調整、動悸、胸痛、自律神経の調整
・郄門(げきもん)
位置: 手のひらを上にして、手首の横じわから指4本分上の中央
効能: 狭心症、動悸、胸痛、自律神経の調整、精神不安、ストレス、咳
◎東洋医学的な観点からの治療で使う経穴
・気虚、血虚(心気虚、心血虚)
内関、神門、気海(※)、足三里
※気海
位置:臍から指2本下
効能:息切れ、易疲労、倦怠感、冷え性、生理痛、消化器症状
・瘀血(おけつ)
膻中、血海、三陰交
膻中
位置:胸骨の中央、両乳頭を結んだ線の中点
効能:動悸、息切れ、精神安定、自律神経の調整
血海
位置:大腿の内側、膝のお皿(膝蓋骨)の上端から指3本分上、内側広筋のふくらみの部分
効能:血流促進、婦人科系疾患、冷え症、むくみ、膝の痛み
三陰交
位置:内くるぶしから指4本分上、脛骨の後ろ側
効能:ホルモンバランスの調整、自律神経の調整、血流促進
・気滞(きたい)
太衝(※1)、合谷(※2)、百会
※1 太衝
位置:足の甲、親指と人差し指の骨(第1・第2中足骨)の間、足の指を曲げたときにできるくぼみの奥
効能:自律神経の調整、肝機能の改善、ストレス緩和、血圧調整、頭痛・めまいの改善、目の疲れ、情緒の安定
※2 合谷
位置:手の甲、親指と人差し指の骨(第1・第2中手骨)の交わる部分のくぼみ
効能:全身の気血の巡りを改善、痛みの緩和、免疫力向上、ストレス軽減、頭痛・歯痛・目の疲れの改善、風邪予防
・陰虚(いんきょ)
照海(※1)、三陰交、太渓(※2)
※1 照海
位置:内くるぶしのすぐ下、足の内側のくぼみ(内果下方)
効能:腎機能の改善、のぼせや冷えの調整、咽喉の潤い調整、不眠、婦人科系の不調(生理不順・更年期障害)
※2 太渓(たいけい)
位置:内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ
効能:腎機能の強化、冷えの改善、ホルモンバランス調整、のぼせ・むくみの解消、腰痛・足の痛みの緩和
◎参考文献
・日本循環器学会『不整脈診療ガイドライン』
・AHA/ACC/HRS合同ガイドライン
・Braunwald’s Heart Disease: A Textbook of Cardiovascular Medicine, 11th Edition ・Merck Manual – Consumer Version
・日本内科学会雑誌
・Li X, et al. (2015). “Effects of Acupuncture on Heart Rate Variability in Patients with Cardiac Arrhythmias.” Journal of Traditional Chinese Medicine.
・Wang J, et al. (2018). “Acupuncture and its Anti-Inflammatory Effects on Cardiovascular Diseases.” Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine.
・Zhao Y, et al. (2019). “Clinical Study on the Effects of Acupuncture on Premature Ventricular Contractions.” Chinese Journal of Integrative Medicine.
・全日本鍼灸学会雑誌第69巻第3号『鍼治療単独により心室性期外収縮頻度の減少が得られた一症例』
・日本良導絡自律神経雑誌『今井力:不整脈と良導絡』
今週もお読み下さりありがとうございました。
今回は「期外収縮に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)」についてお話させて頂きました。
今回ご紹介した経穴はご自身でもセルフケアの一環として指で押したり、ホットタオルやせんねん灸で温めるなど日常に取り入れやすいかと思いますので是非ご活用ください。
足や手にあるツボから期外収縮へ影響を与えられるなんて想像が難しいかと思いますが、東洋医学では体の問題をその部位だけのものとして捉えるのではなく、体の問題が起こる原因に加えて全身のバランスを見て治療を行っていきます。期外収縮も心臓の機能面だけに着目するのではなく、生活習慣やストレスなど、様々な面からアプローチしていく事が出来ますので、お困り事や不安な事がございましたらどうぞご相談ください!
期外収縮についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?
もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!
セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木
こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究」についてお話させて頂きたいと思います。
前回、期外収縮と鍼灸の関わり、鍼灸が身体にどのような影響を与えるのかについてお話させて頂きました。また、東洋医学的観点からみた期外収縮についても少しお話させて頂きました。
今回は実際に鍼灸を用いてどのような研究が行われているのかをみていきましょう。
◎期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究(心室性期外収縮 (PVC)に対する鍼灸治療の症例)
①
【症例】41歳 男性
主訴:不整脈と肩こり
既往歴:過去3回の発作性心房細動
現病歴:上腹部の不快感からに内科医院を受診し、 ホルター心電図の結果から PVC (0.1%以下) がみられるものの問題なしと診断される。症状が悪化し、 12誘導心電図とホルター心電図を実施し、 PVCの単発総数と2段脈の増加がみられたが薬物療法は勧められず経過観察となった。 しかし、 日常生活で不快感があることから鍼治療を開始することとなった。
【方法】鍼治療は不整脈の治療として、 内関、 心兪、 神門、 足三里、 百会、 中、 太渓を選穴し、 旋撚後に10分間の置鍼を行った。
肩こりの治療として、 圧痛部位に10分間の置鍼を行い、 治療頻度は2回/週とした。
効果判定は胸部不快感(テスト法:VAS)、QOL(テスト法:SF-36v2)、 24時間のPVCの総数(テスト法:ホルター心電図)とした。
【結果】1診目の胸部不快感によるVASは1診目では68mm、 3診目では9mm、 5診目では 15 mm、 7診目では4mm、 9診目ではVASが3mmとなり、 SF-36v2の改善も見られた。 日常生活においても不整脈による不快感はほぼ消失した。 また、 治療開始前のPVC単発回数は534回/日、 2段脈は3回/日であったが、 2週間後のPVC単発回数は120回/日、 2段脈は0回/日となり、 PVC総数は正常範囲に近づいた。
【考察】PVCに対する鍼治療は薬物療法との併用だけでなく鍼治療単独でも有効となる可能性があり、 医師の診断によって安全性を考慮した上で行う鍼治療はPVC総数を減少させQOL(生活の質)を改善させることが示唆された。
②
【症例】58歳 男性
現病歴:高血圧 左心室肥大冠不全 4拍に1回程度の心室性期外収縮あり
【方法】坐位(座った状態)で心兪、厥陰兪、左右両側それぞれ10回ずつ雀啄し10分程放置
【結果】正常の洞調律となった
③
【症例】58歳 女性 専業主婦
主訴:早朝どきんどきんとしてくる心室性期外収縮
現病歴:冠不全
【方法】郄門 左右両側の低周波刺15分
【結果】3回目の治療にて消失が確認された
④
【症例】56歳 男性 高校の校長
主訴:自分ではあまり自覚はない
現病歴:心室性期外収縮、忙しいので過緊張が続いていたが健康診断時に不整脈といわれ精査を命ぜられた。胸部X線 、血圧、UCG等 に特に異常はないが、心塞性期外収縮がありトレッドミル(=ランニングマシン)Bruce2度(=運動レベル)でも冠不全の所見はない。
【方法】郄門に左右両側低周波刺激15分。尚薬物療法していない。
【結果】3回目の治療にて消失が確認された
⑤
【症例】69歳 女性 専業主婦
主訴:動悸、息切れ
【方法、結果】郄門置針10分後に大分らくになりS-Tの改善がみられ、さらに低周波通電を行ったところ15分にしてほとんど自覚症はなくなりECG上S-T降下も正常にもどっている
⑥
【症例】48歳 男性 会社社長
現病歴: 高血圧 冠不全
【方法】20分仰臥安静後坐位にて心兪、厥陰兪へ左右両側置針15分
【結果】S-Tの降下度が軽くなっている。尚此の例にトレッドミル(=ランニングマシン)による運動負荷をこころみたがBruce1度(=運動レベル)でもすぐS-Tが降下してくるが心兪、厥陰兪の置針の場合はS-T降下度が少なく呼吸もずっと楽であることを確め得た。
(S-Tの降下は心臓の肥大があったり、心臓の血液循環が十分でなく、心筋への血液供給が不足する場合にみられる所見)
【考察】
以上2例より置針、低周波通電はニトロール様作用(二トロール錠:狭心症や心筋梗塞などの治療に用いられる薬。胸の重苦しい圧迫感やしめつけられるような胸痛を速やかに和らげる)を有していると考えられる。
⑤の冠不全で洞性頻脈がつづきインデラル60mg/日 使用中頻脈はとれるが心兪、厥陰兪置針後のS-T改善は著明でなく、アダラート30mg/日 使用時にはS-T改善が著明にみられた。したがってS-T改善作用は先ず交感神経にはたらくと考えられる。しかし脈膳の増加、血圧上昇等はみられないので更に他の神経メカニズム或いは血中物質の作用があるのであろうと推定せられる。生理学者の佐藤(東京都老人病綜合研究所)は皮膚内臓反射をくわしく研究しているが、マウスの皮膚をつまむと脈増加反射がおこり、これは交感神経を介しておこることを実証していることは興味深い。
◎要約
自律神経の過緊張による心室性期外収縮、又虚血による心室性期外収縮は郄門置針低周波通電により(2~3回)消失した。その際心筋活動の高まりと共に左心房内腔がせまくなり左心機能の改善にもつながると考えられる。著明な血圧変動、脈騰変動はない。自律神経の過緊張の調整、虚血の改善が主な作用と考えている
今回は「期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させて頂きました。少し専門用語などもあり難しい内容となっておりましたがいかがでしたでしょうか?
前回お話させて頂いた通り、鍼治療は自律神経の調整に作用し、期外収縮へ効果を及ぼしているという事がここから読み取れるかと思います。
次回は「期外収縮に対する鍼灸治療で使われる経穴」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木
こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。
前回、期外収縮の概要についてお話しさせていただき、その中で注意すべき期外収縮とそうでないもの、また原因についてもご紹介しましたが、原因の1つとして「精神的なストレスや疲れ」があげられていたことを覚えていますでしょうか?
鍼灸治療において最も注目すべき効果として、この「精神的なストレスや疲れ」にアプローチすることが出来るのです。
鍼灸治療は、自律神経の調整や血流の改善、炎症の抑制などを通じてさまざまな疾患の管理に役立つと考えられています。近年、心血管疾患に対する補完代替医療としての可能性が注目されており、期外収縮に対する効果についても研究が進められています。
一体鍼灸が体にどのような影響を与えて、期外収縮に効果をもたらすのか見ていきましょう。
◎東洋医学的観点から見た期外収縮
前回お話しさせていただいたように西洋医学では、期外収縮は心臓の異常な電気信号によって引き起こされる不整脈の一種とされ、自律神経のバランスや電解質異常、心血管疾患、ストレスなどが発生要因とされています。
一方、東洋医学では、期外収縮のような不整脈を「結脈」「代脈」という呼び方をします。この2つの呼び方の違いは以下の通りです。
結脈 ゆるやかな脈で、時々止まる。主に陰寒や積滞内阻による。不正脈。
代脈 ゆるやかで時々止まるのは結脈と同じだが、止まるのに定まった規則性がある。臓気の衰退。
東洋医学では気や血の不足や滞り、陰陽のバランスの乱れが主な原因であると考えられます。心臓の働きは「心(しん)」という概念に基づき、全身の血流を管理する役割を持つとされています。「心」の機能が正常であれば血液はスムーズに流れますが、気血の不足や停滞、陰陽のバランスの崩れによって心拍が乱れ、期外収縮のような不整脈が生じると考えられます。
具体的な例を見てみましょう。
・気虚・血虚(心気虚、心血虚)
心気(しんき)は心臓を動かすエネルギー、心血(しんけつ)は心臓の働きを維持する栄養源とされ、これらが不足すると心臓の活動が不安定になり、不整脈が起こりやすくなります。
主な症状:疲労感、息切れ、めまい、不眠、顔色の蒼白、冷え性
・瘀血(おけつ)
血流の停滞があると、心臓への血流供給が悪化し、不整脈が発生しやすくなります。特に、動悸や胸の圧迫感を伴う場合、瘀血の影響が考えられます。
主な症状:胸の圧迫感、刺すような痛み、舌の色が暗紫色、顔色のくすみ
・気滞(きたい)
ストレスや精神的な負担が続くと、気の巡りが滞り、自律神経の乱れを引き起こして期外収縮が生じることがあります。
主な症状:ため息が多い、胸の張り感、不安感、イライラ、便秘や腹部の張り
・陰虚(いんきょ)
体内の陰液(血や津液)が不足すると、心火(しんか)が過剰になり、不整脈が発生しやすくなります。特に、夜間に期外収縮が悪化する場合は、陰虚の影響が考えられます。
主な症状:寝汗、口の渇き、ほてり、不眠、動悸、舌の色が紅い
◎鍼灸治療による効果
東洋医学的観点から見た期外収縮についてお話しさせて頂いたところで、次に鍼灸治療が体に与える効果についてご紹介していきます。
・自律神経の調整
期外収縮の発生には、自律神経のバランスが深く関与しています。自律神経は交感神経と副交感神経の2系統に分かれており、簡潔に役割を説明すると交感神経は戦闘モード、副交感神経は休憩モードといったようにそれぞれ担当しています。また交感神経はストレスを感じた際にも作動し、交感神経が優位になると心筋の興奮性が高まり、不整脈が生じやすくなります。
そのため鍼灸は副交感神経を優位にすることで自律神経のバランスを整え、心拍の安定化、またストレスに対する反応に作用するとされています。とある研究では心拍変動(HRV)を改善し、心拍の乱れを抑制する効果があるとの報告もされています。
・炎症の抑制
一説では慢性的な炎症や酸化ストレスが心筋の異常な興奮に関与していると考えられています。研究によると、鍼灸は炎症マーカーであるC反応性タンパク(CRP)やインターロイキン-6(IL-6)の低下に作用し、不整脈の発生を抑える可能性が示唆されています。
・血流の改善
鍼灸は血流を改善し、心筋への酸素供給を安定させることで不整脈を防ぐ効果が期待されます。
鍼灸治療のメカニズムについては当HPの右側の欄の「一般施術」→「鍼灸治療」から詳しい説明を見ることができますのでご興味がございましたら是非ご覧ください!
今回は「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木
こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今月は「鍼灸と期外収縮」についてをテーマとしてお話させて頂きたいと思います。
日常生活の中で「脈が飛ぶような感じがする」「動悸がする」「胸がつまったような感じがする」といったお悩みを持つ方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?
その原因の一つとして考えられるのが 「期外収縮」 という不整脈です。
不整脈と聞くと、「心臓の病気なのではないか」と不安に思われるかもしれませんが、実は半数以上の人が無自覚に経験しているものであり、健康な人にも起こることがある現象で、多くの場合は生死に関わるものではなく心配のないものです。
「不整脈」は一般に「心臓の拍動が不規則なもの,速くなるもの,遅くなるもの」を指し、不整脈の一種である「期外収縮」は中でも正常な拍動の間に時々不規則な拍動が現れるタイプにあたります。
しかし例外として頻繁に起こる場合や、息苦しさ・めまいを伴う場合は、体からのサインかもしれません。
鍼灸治療と期外収縮の関係をお話していくにあたって今回はまず期外収縮とは何か学んでいきましょう!
◎期外収縮とは
心臓は常に一定のリズムで動いており、通常であれば
「トッ・トッ・トッ・トッ」
と等間隔に拍動しています。しかし、この一定のリズムが崩れて
「トッ・トトッ・トッ・トッ」
というように心臓の通常のリズムとは異なるタイミングで余計な収縮が起こる現象のことを期外収縮と呼びます。
実際に期外収縮が起こった方からの声では「脈が一瞬止まったように感じる」「突然ドクンと強い動悸がする」「胸がザワザワする感じがする」といった症状を感じられるそうです。
心臓は普通、洞結節という場所から発生する電気信号でリズムよく動いています。この洞結節は心臓の右心房の上部にあり、特別な細胞が集まっていて、他の神経を介さず自発的に電気信号を作り出します(自動能)。その信号が心房に伝わり、房室結節を通って心室に届き、心臓の筋肉が収縮して血液が体中に送り出されます。
通常、洞結節からの信号は一定の間隔で発生し、心臓のリズムは安定していますが、期外収縮では正常なリズムから外れて、早すぎたり遅すぎたりする収縮が発生します。
・期外収縮の原因
期外収縮が起こる理由は様々で、一例として以下の要因があげられます。
①心臓疾患
心筋梗塞や心不全、弁膜症など、心臓に病気がある場合、期外収縮が発生しやすくなります。
②電解質異常
血液中のカリウムやカルシウム、マグネシウムが不安定だと、心臓のリズムが乱れることがあります。
③薬物やカフェイン
一部の薬やカフェインが心臓に影響を与え、期外収縮を引き起こすことがあります。
④ストレスや疲れ
精神的なストレスや体調不良も、心臓に負担をかけて期外収縮を引き起こすことがあります。
心臓のご病気がない方は④のストレスや疲れが要因となるケースは多いです。
・診断と治療
期外収縮の診断は、心電図(ECG)を使って行います。心電図では、心臓の異常な収縮のタイミングや頻度が記録されるため、どの程度の問題があるかが分かります。
もし期外収縮が頻繁に起こる場合や症状が強い場合、投薬での治療を行うことがあります。また、薬物療法が効果が薄い場合には、カテーテルアブレーションという治療法も考慮されます。
・注意すべき期外収縮
1日に何百回も発生する場合:頻発することで、心臓への負担が増し、他の不整脈が引き起こされることがあります。
めまい・息切れ・意識が遠のく感じがある場合:血流が低下し、脳や体に十分な酸素が届いていない可能性があります。
運動中や労作時に頻発する場合 :心筋虚血(心臓への血流不足)が関係している可能性があります。
このような場合は、一度病院で心電図やホルター心電図(24時間心電図)などを受けて、詳しい検査をしてもらいましょう。
今回は「期外収縮の概要」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は本題である「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木
こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「ご自宅で行えるセルフケア」についてお話させて頂きます。また、最後に今月更新分のブログに用いた参考文献を記載しますのでご参考までに。
◎ご自宅で行なえるセルフケア
セルフケアについてお話していく前に、まず逆子の基礎知識について再確認していきましょう!
逆子(骨盤位)とは、胎児の頭部が上向きとなり、骨盤が子宮口に向いた状態を指します。妊娠28週時点で約20%の胎児が骨盤位であるが、34週までに90%以上が自然回転します。しかし、34週を過ぎると自然回転の可能性は低下していき、38週を超えるとほぼ固定されます。
胎児の回転には以下の要因が影響を与えます。
・子宮内の環境(羊水量、子宮の形状、胎盤位置など)
・母体の筋肉の緊張状態(子宮周囲の筋群や骨盤底筋の柔軟性)
・胎児の運動性(胎動の強さと頻度)
そのため適切なセルフケアにより、母体の筋肉の緊張を和らげ、胎児が回転しやすい環境を整えることが可能と考えられます。
・体温調節と血流改善
子宮周囲の血流が不足すると、胎児の回転が妨げられる可能性があります。特に下肢や腹部の冷えは、骨盤内の循環を悪化させる要因となるため、以下のような対策が推奨されます。
・下肢の保温:靴下・レッグウォーマーの着用
・腹部の保温:腹巻きやカイロ(低温やけどに注意)
・温かい飲料の摂取:白湯、生姜湯、ハーブティーなど
・湯船での入浴:38〜40℃の湯温での全身浴(シャワーのみは避ける)
・逆子体操の実践
逆子体操は、胎児の重心を変えることで回転しやすい環境を作る事を目的として行われます。一定の有効性が報告されていますが、個人差がある為専門家との相談の上行う事を推奨します。
主な方法
・胸膝位(きょうしつい):四つん這いの姿勢から肘と胸を床につけ、骨盤を高く上げる(1回10〜15分、1日2〜3回)。
・仰臥位(ぎょうがい)ブリッジ:仰向けに寝た状態で腰の下にクッションを敷き、骨盤を高くする(10〜15分間保持)。
※担当医とご相談の上、行うようにしてください。
実施時の注意点
・お腹の張りを感じたら中止し、医師に相談する。
・切迫早産のリスクがある場合は禁忌。
・鍼灸によるアプローチ
前回お話させて頂いた通り東洋医学では、経穴(ツボ)への刺激が胎動を促進し、逆子改善に有効であるとされています。
代表的な経穴とその位置
・至陰(しいん):足の小指の爪の外側
・三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上、指4本分の位置
鍼灸院で鍼灸治療を受けることは勿論、セルフケアとしてご自身でツボ押しやお灸をする事も◎です。もし場所や行い方が合っているか不安などご不明点があればスタッフへお声がけください!
・ 精神的リラックスと胎児への働きかけ
母体のストレスや緊張は、交感神経を優位にし、子宮周囲の筋肉の緊張を高める可能性があります。そのため、心身のリラックスを意識することが重要です。
有効とされる手法
・リラックスできる環境を整える:クッションや丸めたタオルを用いて座る姿勢を負担が少ないようにしたり、シムス位と呼ばれる妊婦さんにとって楽な体勢をとるようにしたり、動きやすく身体を冷やさないマタニティ服の着用を心掛けるなど心身ともにリラックスしやすい環境を目指しましょう。
・深呼吸や瞑想:深呼吸や瞑想(マインドフルネス)を行い、気持ちを落ち着ける習慣を付けましょう。特に妊婦さんは腹部の圧迫感から浅い呼吸になりやすいため、動悸や気分が落ち着かないなど多岐に渡る不快な症状の原因となる場合があります。
・適度な運動:ウォーキングや軽いストレッチ、ヨガなどにより、骨盤周囲の柔軟性を高めましょう。また適度な運動は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの予防にも繋がります。お近くに水泳が出来る施設などがあれば温水プールでの運動は関節への負担が少ない状態で出来るのでお勧めです。ただお帰りの際に体を冷やしやすい為、その点はご注意ください。
・逆子が改善しない場合の対応
妊娠34週を超えても逆子が継続する場合、医師との相談のもと、外回転術(ECV: External Cephalic Version)が検討されることがあります。これは、医師が手を用いて胎児を回転させる方法であり、成功率は60%程度と報告されています。
また、38週を過ぎても逆子が持続する場合、分娩方法の選択が必要となる。
逆子のセルフケアとして、身体を温めることや逆子体操、鍼灸、心身のリラックスなどが推奨されますが、セルフケアは医療機関の指導のもとで適切に実施することが重要です。また、逆子が治らない場合の対応についても、早めに医師と相談し、分娩方法の選択を進めることが望ましいです。
◎参考文献
日本産科婦人科学会(2023)『妊娠・出産の医学』
日本助産学会(2018)『助産学ハンドブック』
厚生労働省(2021)『妊娠期のセルフケアに関するガイドライン』
高橋真紀(2020)『妊娠と冷え:血流改善の重要性』
日本周産期医学会(2020)『妊娠中のストレス管理』
藤本幸子(2019)『東洋医学と妊婦ケア:鍼灸の臨床研究』
Cardini F, Weixin H. (1998). Moxibustion for correction of breech presentation: A randomized controlled trial. JAMA, 280(18), 1580-1583.
Van den Berg I, Kaandorp G, Bosch J, et al. (2008). Effectiveness of acupuncture-type interventions versus expectant management to correct breech presentation: A systematic review. Complementary Therapies in Medicine.
高橋徳治, 村田明美, 高橋健一. (2010). 妊婦の逆子に対する至陰の灸の有効性. 日本鍼灸医学会誌.
American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). (2020). Obstetric Care Consensus No. 13: Screening for Fetal Malpresentation.
Berhan, Y., & Haileamlak, A. (2016). The mode of delivery and perinatal outcomes in breech presentation.
Caughey, A. B., et al. (2018). ACOG Practice Bulletin No. 190: Management of Breech Presentation.
Cunningham, F. G., et al. (2022). Williams Obstetrics, 26th Edition.
Hofmeyr, G. J., et al. (2015). External cephalic version for breech presentation at term. Cochrane Database.
Liu, J., Zhang, Y., & Xu, Y. (2015). Acupuncture for breech presentation: A systematic review and meta-analysis. BMC Complementary and Alternative Medicine, 15(1), 140.
Stöckl, A., et al. (2015). The effectiveness of acupuncture for breech presentation: A prospective study. European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology, 191, 40-45.
Goswami, D., et al. (2013). Acupuncture for breech presentation at term: A randomized controlled trial. Australian and New Zealand Journal of Obstetrics and Gynaecology, 53(2), 173-177.
Zhou, H., et al. (2017). The efficacy of acupuncture in the treatment of breech presentation: A large-scale retrospective study. Journal of Traditional Chinese Medicine, 37(6), 802-808.
Wang, C., et al. (2018). Acupuncture for breech presentation: A randomized controlled trial. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2018
今週も読んで下さりありがとうございました。 今回は「ご自宅で行えるセルフケア」についてお話させて頂きました。
逆子についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?
もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!
来月からはまた新しい題材でブログを更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木
こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。
◎逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)
前回、世界で行われている逆子に対する鍼灸治療の臨床研究についてご紹介させていただきましたので、今回はその際に使われた経穴(ツボ)についてお話させていただきます。
・至陰
位置:足の小指外側の爪の付け根付近。
主な作用:
胎児の回転を促進する
子宮や骨盤内の血流を改善する
ホルモンバランスを整える
前回ご紹介した臨床研究の中でも頻出していた「至陰」への灸治療は、妊娠30〜35週の妊婦を対象に行われることが多く、逆子の自然矯正を促す安全な方法として広く活用されています。
しかし、至陰への刺激のみで十分な効果が得られない場合もあります。そこで、補助として他の経穴を併用することで、より高い効果を期待できます。
・合谷
位置:手の甲、親指と人差し指の骨が交わるところのくぼみ。
主な作用
自律神経を調整 → リラックス効果により子宮の過緊張を緩和、胎児の回転を促す
ストレスや緊張を軽減し、副交感神経を優位にすることで血流を改善。
特に、ストレスや自律神経の乱れが影響している妊婦の方に対して、合谷への刺激は精神的な安定をもたらし、体の緊張を緩和する働きがあります。
基本的な施術手順
至陰(BL67)への灸治療(米粒大のもぐさを点火し、数回繰り返す)
合谷(LI4)への軽い指圧や鍼(自律神経の調整と気血の巡りを促す)
◎そのほかのお役立ち経穴(ツボ)
・太衝(たいしょう)
場所:
足の甲にあります。親指と人差し指の間の骨が交わるところから指を少し下にずらした部分です。具体的には、足の親指と人差し指の間の骨を感じながら、少し人差し指側の足の甲にあります。
効果:
腰痛や足の疲れ: 足をよく使う妊婦さんに特におすすめ。血流を促進するため、足のだるさやむくみを軽減するのに役立ちます。
消化器系の不調: 便秘や消化不良の改善にも効果的です。妊娠中に便秘に悩む方も多いため、このツボは有用です。
痛みの緩和: このツボは、痛みの緩和にも役立ちます。特に、筋肉の張りや痛みを和らげるとされており、妊娠中の体調管理に役立ちます。
注意点:
強く押しすぎない: 妊娠中に強い刺激を加えると、逆に体調を崩すこともあるので、押す際はあくまで優しく行いましょう。
妊娠後期には慎重に: 特に妊娠後期になると、過度な刺激が陣痛を引き起こす可能性があるため、自己治療を行う際は注意が必要です。
・風池(ふうち)
場所:
後頭部に位置します。髪の生え際で、首の付け根あたりにあります。頭を前に倒したときに、首の筋肉が引っ張られるあたりの筋肉のくぼみに位置します。首の筋肉が張っている感じがある場所です。
効果:
頭痛や目の疲れ: 風池は、頭痛や目の疲れを和らげる効果があります。妊婦さんはホルモンバランスや体調の変化で、頭痛や目の疲れを感じやすいことがあるため、このツボを押すことで軽減できる場合があります。
リラックス効果: 自律神経のバランスを整える働きがあり、リラックス効果が高いとされています。妊婦さんのストレスや不安を軽減するのにも役立ちます。
肩こりや首のこりの解消: 首や肩のこりを改善し、血流を促進します。特に妊娠中は姿勢が悪くなりがちなので、首や肩のこりが生じやすいです。風池を押すことでその緩和が期待できます。
注意点:
力加減に注意: 風池は、頭部に近い部分にあるため、強く押しすぎないように気をつけましょう。優しく指圧するようにします。
妊娠中期まで: 妊娠初期や後期に強い刺激を加えるのは避け、無理なく押すようにします。体調が良いときに軽く触れる程度で大丈夫です。
◎ポイント
妊娠30〜35週の期間に行うのが最適。
施術後はリラックスし、体を温めることが重要。
自宅でのお灸を指導することもある(特に至陰へのセルフ灸)
→セルフケアの一環としておうちでお灸をやっていただけると一番良いのですが、ご自身でのお灸が怖い方は下半身を温めることや、体を冷やさないような食事を意識するだけでも◎(食養生やセルフケアに関しては次回詳しくお話させていただきますので、ぜひご覧ください!)
鍼灸治療は、逆子矯正において安全で効果的な選択肢の一つです。逆子と診断された場合は、専門の鍼灸師に相談し、自分に合った施術を受けることをおすすめします。
今回は「逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「ご自宅で行えるセルフケア」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木
こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「逆子に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。
◎逆子に対する鍼灸治療における臨床試験、またそのレビュー
前回はまず逆子に関するお話をするにあたって逆子の定義や種類についてお話させていただきました。
今回は、本題でもある鍼灸治療の効果の程にフォーカスを当ててお話させていただきたいと思います。
・逆子に有効とされる「至陰」のツボ
鍼灸で逆子の矯正を試みる際、最も重要なツボとされているのが「至陰(しいん)」です。今回ご紹介した研究の中でもほとんどが使用しています。今回は使用された経穴については割愛させて頂きますが、次回改めて記載させて頂きます。
場所: 足の小指の外側、爪の生え際
作用: 体内の気血の巡りを改善するとされる
至陰への灸治療を行うことで、胎動が活発になり、赤ちゃんが自然に回転しやすくなると言われています。
・鍼灸のメカニズム
では、なぜお灸が逆子の矯正に効果があるのでしょうか?
血流促進: お灸によって体、特に下肢や子宮の血流が改善し、体の冷えがとれることにより胎児が動きやすくなる
副交感神経の活性化: リラックス効果により、全身の過剰な緊張を和らげる
胎動の促進: 胎児の動きを促し、自然に頭位へ回転する可能性を高める
鍼灸の逆子矯正効果について、いくつか実際の研究を例にあげてみていきましょう。
・JAMA掲載のランダム化比較試験(Cardini & Weixin, 1998)
Cardiniら(1998)の研究では、妊娠33〜35週の逆子妊婦130名を対象に、至陰への灸治療を行ったグループ(65名)と、何もしなかった対照群(65名)を比較しました。
結果:
治療群(灸治療を行った群)の逆子矯正率は75%(49/65人)
対照群(何もしなかった群)の逆子矯正率は47%(31/65人)
研究者の見解:
灸治療が逆子矯正に有意に効果的であることを示したとし、鍼灸治療が逆子妊婦に対して非侵襲的かつ安全な選択肢となり得ることを強調しました。また、この治療法が、帝王切開を回避するための効果的な方法の一つとして注目されています。
・ Liuらによるシステマティックレビュー(2015)
Liuら(2015)の系統的レビューとメタアナリシスでは、鍼灸が逆子矯正において有意に効果があることが示されています。特に、至陰への灸治療が最も効果的であるとされています。
研究者の見解:
複数の研究データを統合し、鍼灸治療が逆子妊婦に対して有効であるというエビデンスを提供しました。彼らは、鍼灸が胎児の回転を促進するメカニズムについて更なる解明が必要だとし、鍼灸が他の治療法と比較して低リスクである点を挙げて、医療現場での積極的な利用を提案しています。
・イギリスの研究(Stöcklら, 2015)
逆子妊婦を治療群と対象群150名ずつ分けて鍼治療を行い、逆子矯正率を比較しました。
結果:
治療群の逆子矯正率は68%(102/150人)
対照群の逆子矯正率は40%(60/150人)
研究者の見解:
鍼治療が逆子妊婦に対して実際的かつ効果的な治療法であることを認め、その結果は他の非侵襲的な治療法と同等かそれ以上であるとしています。加えて、鍼治療は副作用が少なく、患者にとってストレスの少ない治療である点を評価しています。
・日本国内の研究(高橋ら, 2010)
日本国内で行われた高橋ら(2010)の研究でも、至陰への灸治療が逆子矯正に効果的であることが示されています。この研究では逆子妊婦を治療群と対象群65人ずつに分けて行われました。
結果:
治療群の逆子矯正率は60%(39/65人)
対照群の逆子矯正率は40%(26/65人)
研究者の見解:
高橋らは、鍼灸が逆子の矯正に一定の効果を持つことを示したとし、特に日本の産婦人科医の間でも鍼灸治療を取り入れる動きが広がりつつあることを指摘しました。ただし、全ての妊婦に対して効果があるわけではなく、個人差があることを考慮する必要があると述べています。
・オーストラリアの研究(Goswamiら, 2013)
逆子妊婦100名を治療群と対象群に分け、鍼灸治療を行いました。
結果:
治療群の逆子矯正率は80%(80/100人)
対照群の逆子矯正率は45%(45/100人)
研究者の見解:
鍼灸治療の高い効果を確認し、鍼灸が医療現場において逆子矯正の補完的手段として役立つ可能性があることを指摘しました。また、鍼灸治療がリスクが少ないことから、自然分娩を希望する妊婦にとって非常に有効な選択肢となり得ると結論付けています。
・オーストリアの研究(Wangら, 2018)
妊娠32〜36週の治療群と対象群逆子妊婦120名ずつを対象に鍼灸治療を施しました。
結果:
治療群の逆子矯正率は75%(90/120人)
対照群の逆子矯正率は50%(60/120人)
研究者の見解:
Wangらは、鍼灸治療の有効性を再確認し、鍼治療が逆子妊婦に対して非侵襲的な治療方法として非常に適していると述べています。また、鍼治療は妊婦にとって身体的負担が少なく、医師と連携しながら行うことで、安全性が確保される点も評価されています。
◎鍼灸治療を受ける際の注意点
鍼灸は比較的安全な治療法ですが、以下の点には注意が必要です。
医師と相談すること: 妊娠中の体調やリスクを考慮し、医師と相談の上で実施する
現在の研究では、至陰への灸治療が逆子の矯正に一定の効果を持つ可能性があることが示唆されています。ただし、すべての妊婦に有効とは限らず、個人差があることを理解した上で取り入れることが重要です。
「逆子だから帝王切開しかない」と決めつける前に、医師や鍼灸師と相談しながら、安全な方法で試してみる価値はあるかもしれません。
◎鍼灸以外で逆子治療に用いられる方法
・逆子体操
逆子体操は、胎児の向きを変えやすくするために行う体操で、一般的に妊娠30~34週頃に試みられます。ブリッジ法や胸膝位などが代表的ですが、子宮収縮を誘発する可能性があり、すべての妊婦さんに適しているわけではないため、医師と相談しながら行うことが大切です。
・外回転術(ECV)
外回転術(エクスターナル・セファリック・バージョン)は、医師が手を使って胎児を頭位に回転させる方法です。成功率は50~60パーセントとされていますが、胎盤剥離や臍帯巻絡のリスクがあり、また胎盤の状態や羊水量などによって適応が制限されることがあります。
・自然に戻るのを待つ
34週頃までは胎児が自然に回転する可能性があるため、無理に矯正を試みず経過観察することも選択肢の一つです。特に初産婦より経産婦の方が自然に頭位へ戻る確率が高いと言われています。
今回は「逆子に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木