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鍼灸と期外収縮④

2025.03.28

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。

今回は「期外収縮に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)」についてお話させていただきます。また今月のブログで使用した参考文献も最後に記載しておりますのでどうぞご覧ください。

 

◎期外収縮に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)

前回、期外収縮に対する鍼灸治療の臨床研究についてご紹介させていただきましたので、今回はその際に使われた経穴(ツボ)の位置や効能についてお話させていただきます。

また、鍼灸と期外収縮②でご紹介した東洋医学的な観点からの治療で使う経穴についてもお話していきたいと思います。最後までお付き合い頂けますと幸いです。

 

【臨床研究で使われた経穴】

 

・内関(ないかん)

位置: 腕の中央、手のひらを上にして、手首の横じわから指3本分上

効能: 心悸亢進(動悸)、胸痛、胃の不快感、乗り物酔い、自律神経の調整

 

・心兪(しんゆ)

位置: 背中の第5胸椎棘突起の両側、指2本分外側

効能: 心臓の機能調整、動悸、息切れ、不眠、精神安定

 

・神門(しんもん)

位置: 手のひらを上にして、手首のシワの小指側にある窪み

効能: 動悸、不眠、精神安定、自律神経の調整

 

・足三里(あしさんり)

位置: 膝の下、脛骨(すねの骨)の外側、膝蓋骨(膝のお皿)の下から指4本分下

効能: 胃腸の調整、倦怠感の改善、免疫力向上、自律神経の調整

 

・百会(ひゃくえ)

位置: 頭頂部、両耳を結ぶ線と正中線の交点

効能: 自律神経の調整、精神安定、めまい、頭痛、不眠、眼精疲労、肩こり

 

・太渓(たいけい)

位置: 内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ

効能: 腎の機能調整、むくみ、冷え症、腰痛、のぼせの改善

 

・厥陰兪(けついんゆ)

位置: 背中の第4胸椎棘突起の両側、指2本分外側

効能: 心臓の血流調整、動悸、胸痛、自律神経の調整

 

・郄門(げきもん)

位置: 手のひらを上にして、手首の横じわから指4本分上の中央

効能: 狭心症、動悸、胸痛、自律神経の調整、精神不安、ストレス、咳

 

 

◎東洋医学的な観点からの治療で使う経穴

 

・気虚、血虚(心気虚、心血虚)

内関、神門、気海(※)、足三里

 

※気海

位置:臍から指2本下

効能:息切れ、易疲労、倦怠感、冷え性、生理痛、消化器症状

 

・瘀血(おけつ)

膻中、血海、三陰交

 

膻中

位置:胸骨の中央、両乳頭を結んだ線の中点

効能:動悸、息切れ、精神安定、自律神経の調整

 

血海

位置:大腿の内側、膝のお皿(膝蓋骨)の上端から指3本分上、内側広筋のふくらみの部分

効能:血流促進、婦人科系疾患、冷え症、むくみ、膝の痛み

 

三陰交

位置:内くるぶしから指4本分上、脛骨の後ろ側

効能:ホルモンバランスの調整、自律神経の調整、血流促進

 

・気滞(きたい)

太衝(※1)、合谷(※2)、百会

 

※1 太衝

位置:足の甲、親指と人差し指の骨(第1・第2中足骨)の間、足の指を曲げたときにできるくぼみの奥

効能:自律神経の調整、肝機能の改善、ストレス緩和、血圧調整、頭痛・めまいの改善、目の疲れ、情緒の安定

 

※2 合谷

位置:手の甲、親指と人差し指の骨(第1・第2中手骨)の交わる部分のくぼみ

効能:全身の気血の巡りを改善、痛みの緩和、免疫力向上、ストレス軽減、頭痛・歯痛・目の疲れの改善、風邪予防

 

・陰虚(いんきょ)


照海(※1)、三陰交、太渓(※2)

 

※1 照海

位置:内くるぶしのすぐ下、足の内側のくぼみ(内果下方)

効能:腎機能の改善、のぼせや冷えの調整、咽喉の潤い調整、不眠、婦人科系の不調(生理不順・更年期障害)

 

※2 太渓(たいけい)

位置:内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ

効能:腎機能の強化、冷えの改善、ホルモンバランス調整、のぼせ・むくみの解消、腰痛・足の痛みの緩和

 

 

◎参考文献

 

・日本循環器学会『不整脈診療ガイドライン』

・AHA/ACC/HRS合同ガイドライン

・Braunwald’s Heart Disease: A Textbook of Cardiovascular Medicine, 11th Edition ・Merck Manual – Consumer Version

・日本内科学会雑誌

・Li X, et al. (2015). “Effects of Acupuncture on Heart Rate Variability in Patients with Cardiac Arrhythmias.” Journal of Traditional Chinese Medicine.

・Wang J, et al. (2018). “Acupuncture and its Anti-Inflammatory Effects on Cardiovascular Diseases.” Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine.

・Zhao Y, et al. (2019). “Clinical Study on the Effects of Acupuncture on Premature Ventricular Contractions.” Chinese Journal of Integrative Medicine.

・全日本鍼灸学会雑誌第69巻第3号『鍼治療単独により心室性期外収縮頻度の減少が得られた一症例』

・日本良導絡自律神経雑誌『今井力:不整脈と良導絡』

 

 

 

今週もお読み下さりありがとうございました。

今回は「期外収縮に対する鍼灸治療で使われる経穴(ツボ)」についてお話させて頂きました。

今回ご紹介した経穴はご自身でもセルフケアの一環として指で押したり、ホットタオルやせんねん灸で温めるなど日常に取り入れやすいかと思いますので是非ご活用ください。

足や手にあるツボから期外収縮へ影響を与えられるなんて想像が難しいかと思いますが、東洋医学では体の問題をその部位だけのものとして捉えるのではなく、体の問題が起こる原因に加えて全身のバランスを見て治療を行っていきます。期外収縮も心臓の機能面だけに着目するのではなく、生活習慣やストレスなど、様々な面からアプローチしていく事が出来ますので、お困り事や不安な事がございましたらどうぞご相談ください!

 

期外収縮についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?

もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!

  セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と期外収縮②

2025.03.14

こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。

前回、期外収縮の概要についてお話しさせていただき、その中で注意すべき期外収縮とそうでないもの、また原因についてもご紹介しましたが、原因の1つとして「精神的なストレスや疲れ」があげられていたことを覚えていますでしょうか?
鍼灸治療において最も注目すべき効果として、この「精神的なストレスや疲れ」にアプローチすることが出来るのです。
鍼灸治療は、自律神経の調整や血流の改善、炎症の抑制などを通じてさまざまな疾患の管理に役立つと考えられています。近年、心血管疾患に対する補完代替医療としての可能性が注目されており、期外収縮に対する効果についても研究が進められています。
一体鍼灸が体にどのような影響を与えて、期外収縮に効果をもたらすのか見ていきましょう。

◎東洋医学的観点から見た期外収縮
前回お話しさせていただいたように西洋医学では、期外収縮は心臓の異常な電気信号によって引き起こされる不整脈の一種とされ、自律神経のバランスや電解質異常、心血管疾患、ストレスなどが発生要因とされています。
一方、東洋医学では、期外収縮のような不整脈を「結脈」「代脈」という呼び方をします。この2つの呼び方の違いは以下の通りです。
結脈 ゆるやかな脈で、時々止まる。主に陰寒や積滞内阻による。不正脈。
代脈 ゆるやかで時々止まるのは結脈と同じだが、止まるのに定まった規則性がある。臓気の衰退。
東洋医学では気や血の不足や滞り、陰陽のバランスの乱れが主な原因であると考えられます。心臓の働きは「心(しん)」という概念に基づき、全身の血流を管理する役割を持つとされています。「心」の機能が正常であれば血液はスムーズに流れますが、気血の不足や停滞、陰陽のバランスの崩れによって心拍が乱れ、期外収縮のような不整脈が生じると考えられます。
具体的な例を見てみましょう。

・気虚・血虚(心気虚、心血虚)
心気(しんき)は心臓を動かすエネルギー、心血(しんけつ)は心臓の働きを維持する栄養源とされ、これらが不足すると心臓の活動が不安定になり、不整脈が起こりやすくなります。
主な症状:疲労感、息切れ、めまい、不眠、顔色の蒼白、冷え性

・瘀血(おけつ)
血流の停滞があると、心臓への血流供給が悪化し、不整脈が発生しやすくなります。特に、動悸や胸の圧迫感を伴う場合、瘀血の影響が考えられます。
主な症状:胸の圧迫感、刺すような痛み、舌の色が暗紫色、顔色のくすみ

・気滞(きたい)
ストレスや精神的な負担が続くと、気の巡りが滞り、自律神経の乱れを引き起こして期外収縮が生じることがあります。
主な症状:ため息が多い、胸の張り感、不安感、イライラ、便秘や腹部の張り

・陰虚(いんきょ)
体内の陰液(血や津液)が不足すると、心火(しんか)が過剰になり、不整脈が発生しやすくなります。特に、夜間に期外収縮が悪化する場合は、陰虚の影響が考えられます。
主な症状:寝汗、口の渇き、ほてり、不眠、動悸、舌の色が紅い


◎鍼灸治療による効果
東洋医学的観点から見た期外収縮についてお話しさせて頂いたところで、次に鍼灸治療が体に与える効果についてご紹介していきます。

・自律神経の調整
期外収縮の発生には、自律神経のバランスが深く関与しています。自律神経は交感神経と副交感神経の2系統に分かれており、簡潔に役割を説明すると交感神経は戦闘モード、副交感神経は休憩モードといったようにそれぞれ担当しています。また交感神経はストレスを感じた際にも作動し、交感神経が優位になると心筋の興奮性が高まり、不整脈が生じやすくなります。
そのため鍼灸は副交感神経を優位にすることで自律神経のバランスを整え、心拍の安定化、またストレスに対する反応に作用するとされています。とある研究では心拍変動(HRV)を改善し、心拍の乱れを抑制する効果があるとの報告もされています。

・炎症の抑制
一説では慢性的な炎症や酸化ストレスが心筋の異常な興奮に関与していると考えられています。研究によると、鍼灸は炎症マーカーであるC反応性タンパク(CRP)やインターロイキン-6(IL-6)の低下に作用し、不整脈の発生を抑える可能性が示唆されています。

・血流の改善
鍼灸は血流を改善し、心筋への酸素供給を安定させることで不整脈を防ぐ効果が期待されます。
鍼灸治療のメカニズムについては当HPの右側の欄の「一般施術」→「鍼灸治療」から詳しい説明を見ることができますのでご興味がございましたら是非ご覧ください!


今回は「期外収縮と鍼灸の関わり」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「期外収縮に対する鍼灸治療における臨床研究」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。


セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

鍼灸とIBS(過敏性腸症候群)④

2025.01.27

こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴」「セルフケア」についてお話させて頂きます。また、最後に今月更新分のブログに用いた参考文献を記載しますのでご参考までに。
 
◎使用される経穴
前回はIBSに対する鍼灸治療の臨床研究についてお話させていただきましたので、その中で出てきた経穴、またそのほか消化器系に作用する経穴の場所と作用についてご紹介していきます。

・足三里(あしさんり)
位置: 膝の下にある外側の窪みから指4本下、脛骨の外側
効果: かの有名な伊能忠敬さんもお灸を据えていたと言われている胃腸機能を整える代表的な経穴で、胃腸の働きを整え腹部膨満感を軽減します。

・合谷(ごうこく)
位置: 手の甲、親指と人差し指の骨が交わるところ
効果: 自律神経の働きを整える際に用いられる代表的な経穴です。それに伴い消化器の症状やストレスを緩和する効果が期待できます。

・太衝(たいしょう)
位置: 足の甲、第1趾(親指)と第2趾(人差し指)の間のくぼみ
効果: 血流の改善、筋肉の緊張やストレスの緩和、肝(ストレスからの影響を最も受けやすい五臓六腑)の気を調整し、全身のエネルギーの巡りをよくする。

・内関(ないかん)
位置: 手首の中央から指3本分上(肘側)
効果: ストレスや不安を和らげ、消化器の症状の緩和や自律神経を調整する作用があります。それに伴い睡眠の質の向上も期待できます。

・百会(ひゃくえ)
位置: 頭のてっぺん、両耳を結んだ線と正中線の交点
効果: 副交感神経を活性化し、自律神経のバランスを整える効果があります。精神を落ち着かせる作用に加え、血流促進による全身の代謝機能向上が期待されます。

・天枢(てんすう)
位置: 臍から指3本外側(左右)
効果: 消化機能の調整に使われる代表的な経穴です。

・公孫(こうそん)
位置: 足の親指の付け根のふくらみから指で骨をなぞっていき、指が止まる部分(凹んだ部分)
効果: 胃腸機能の改善や腹痛の緩和が期待できます。

・上巨虚(じょうこきょ)
位置: 足三里から指4本分下
効果: 消化機能の調整、自律神経のバランス改善、腸の運動機能の正常化が期待できます。

・神門(しんもん)
位置: 手首にあるしわを指で小指側に軽くなでていき骨(豆状骨)の出っ張りの手前で指が止まる部分
効果: 不眠やイライラなど心の安定やストレス緩和に使われる代表的な経穴です。

・関元(かんげん)
位置: 臍から指4本下
効果: 下腹部の気血を整え、内臓機能を改善する効果や、自律神経のバランスを整え、ストレス緩和が期待できます。
 
・中脘(ちゅうかん)
位置: 臍から指4本上
効果: 「胃の中央」という意味からこの名前が付けられた経穴で、腸の運動や消化吸収を調整する効果が期待できます。
 
 ・腎兪(じんゆ)
位置: 第2腰椎から指2本外側
効果: 全身のエネルギーの流れを整える際に使われる経穴です。腰痛にも効果◎

・脾兪(ひゆ)
位置: 第11胸椎と第12胸椎の間の高さから指2本外側
効果: 内臓機能の改善に使われる代表的な経穴です。腰痛にも効果◎

・壇中(だんちゅう)
位置: 胸の中心、乳頭を結んだ線の中央
効果: 心臓のちょうど前面にあたる経穴です。呼吸を整え心を落ち着ける作用があり、ストレス緩和にも効果的です。

・三陰交(さんいんこう)
位置: 足首の内側、内くるぶしから指4本上
効果: 下肢の血流改善効果が期待でき、冷えなどの刺激から起こる消化器症状の予防に役立ちます。

 
◎セルフケア
次に食養生の観点からセルフケアについてお話させていただきます。

・スパイス
冷え性を伴う便秘や停滞腸に効果的な作用を持つ、体を温めてくれるスパイスや、胃腸の働きを高めてくれる作用を持つものをご紹介していきます。

ジンジャー、ペパーミント、シナモン、ターメリック、クローブ、コリアンダー、ローリエ、サフラン など

※症状悪化の原因となる場合がありますので適量の摂取を心掛け、決して過剰摂取にならないようご注意ください

 

・消化の良い食物
脂っぽいものや過度に食物繊維の多いもの、人工甘味料が多量に使われたもの、蕎麦やコーヒーなど、身体に悪影響を及ぼす食物は想像に容易いですが、その逆はなかなか想像しにくい方が多いのではないでしょうか?一例として以下に消化の良い食物をあげていきます。体質などにより個人差があるため、あくまで参考としてご活用ください。自分に合った食生活を見つける一助となれましたら幸いです。

植物油、脂肪分の少ない魚(かれい、たら、たい、ひらめ、すずきなど)、脂肪分の少ない肉(ソーセージなどの加工肉を除くヒレ肉類、鶏肉など)、白身魚、煮野菜(かぶ、にんじん、大根、カリフラワー、キャベツ、ほうれん草など)、白湯、麦茶、みそ汁やスープ(海藻類は避け、消化に良い具を使いましょう)、たまご、やまいも、きな粉 など

 


 
◎参考文献
Liu, X., et al. (2018). Effects of acupuncture on blood glucose in type 2 diabetes mellitus patients: A randomized controlled trial. Journal of Diabetes Research.
Sun, Y., et al. (2019). Acupuncture for diabetic peripheral neuropathy: A clinical study. Pain Medicine.
Zhao, L., et al. (2021). Systematic review and meta-analysis of acupuncture for diabetes. Complementary Therapies in Medicine.
Kim, T. H., et al. (2020). “Acupuncture for the treatment of diabetes mellitus: A systematic review and meta-analysis.”
Diabetes Research and Clinical Practice, 159, 107982. Cho, W. C., & Chen, H. Y. (2009). “Clinical efficacy of acupuncture on diabetes mellitus: A meta-analysis.”
Journal of Acupuncture and Meridian Studies, 2(4), 263–265.
Lee, M. S., et al. (2009). “Acupuncture for treating peripheral diabetic neuropathy: A systematic review.”
The Clinical Journal of Pain, 25(5), 431–437. International Diabetes Federation (2021). IDF Diabetes Atlas (10th Edition).
中国中医科学院. (2015). 鍼灸学概論. 北京科学技術出版社.
日本糖尿病学会
厚生労働省
国際糖尿病連合(IDF)
アメリカ糖尿病学会(ADA)
日本医師会「生活習慣病予防と糖尿病」 日本糖尿病学会編『糖尿病治療ガイドライン 2023』(文光堂)
WHO(世界保健機関)
Standards of Medical Care in Diabetes – 2024.Diabetes Care. 国立研究開発法人国立国際医療研究センター『糖尿病の基礎知識』
松生恒夫『「腸ストレス」を取り去る習慣』
 

 
◎最後に
鍼灸治療は補完療法として非常に有望な選択肢ですが、個々の患者に合わせた適切な診断と施術が求められます。また、鍼灸治療は現段階ではあくまで補助療法的な位置づけにあり、薬物療法や食事療法と組み合わせて活用することが重要です(重症度があがれば上がる程、これに該当します)
専門家との連携を取りながら、西洋医学と東洋医学を融合させより効果的な治療を目指していきましょう。
 
 

今週も読んで下さりありがとうございました。 今回は「鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴」「参考文献」「セルフケア」についてお話させて頂きました。
IBS(過敏性腸症候群)についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?
もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!
来月からはまた新しい題材でブログを更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。

今週も読んで下さりありがとうございました。

 

セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院 佐々木

鍼灸と月経前症候群(PMS)③

2024.10.18

こんにちは。セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。

今回は「PMSによく使われる経穴(ツボ)」についてお話させて頂きます。

◎PMSによく使われる経穴(ツボ) 鍼灸の治療では、特定の経穴(ツボ)を刺激する事で神経系やホルモン分泌の調整、また体内の気:エネルギーの流れを整えます。 今回はWHO(世界保健機関)が認定した国際標準経穴部位の中でも、ご自身でも指で押すことが出来るセルフケア向けのツボをご紹介していきたいと思います。

※「寸」という経穴を取るときの単位が文章内にありますが、 ①中指の第2・第3関節の間の長さか母指の横幅を1寸 ②人差し指・中指・薬指を揃えた横幅を2寸 ③人差し指・中指・薬指・小指を揃えた横幅を3寸 として長さを表しています。これは鍼灸師の実技試験でも用いられる「骨度法(こつどほう)」、「同身寸法(どうしんすんほう)」という性別や年齢、身長、体重等に関係なく骨格を基準として個人の寸法を決める方法です。

百会(ひゃくえ)」:左右の耳の穴を結んだラインと眉間の中心から頭のてっぺんに向けたラインが頭上で交わるところ、頭頂部の真ん中。少しへこんでいる所に取る。 「百」=多種多様 「会」=会う ここは、たくさんの経絡の交会穴(三陽経、肝経、督脈が交わる場所)なので、「三陽五会」とも呼ばれています。幅広い用途で用いられ、頭痛や不眠症の他、自律神経を整える際にも使われます。

合谷(ごうこく)」:手の甲側の親指と人差し指の骨が交わる手前にとる。人差し指側に向かって押す。 「合」=二つのことが合わさる 筋と筋とが合わさったくぼみのところにあり、大腸経の原穴であり四総穴でもあります。別名「虎口(ここう)」ともいわれ、親指と人差し指を大きく広げたときに虎の口に似ていることから名付けられました。万能のツボとも呼ばれるほど用途が幅広く、PMSや生理痛の緩和の他肩こりや頭痛、歯痛にも使われます。

気海(きかい)」:臍の2寸(指3本)下に取る。 「気海」という名前は、気:エネルギーの海、つまり気が集まる場所であることから名付けられました。気の流れを整える重要な経穴とされていて、生理痛の緩和や便秘、下痢にも使われています。せんねん灸やカイロ、湯たんぽ等を用いて温めると効果的です。

関元(かんげん)」:臍の3寸(指4本)下に取る。 「関」=関所、重要な場所 「元」=元気・元気が生まれるところ 別名「丹田(たんでん)」とも呼ばれ、気が集まる場所とされています。下腹部を温めるツボとして知られていて、せんねん灸やカイロ、湯たんぽ等を用いてここを温めると効率よく全身を温めることができます。

中極(ちゅうきょく)」:臍の4寸(気海から指3本)下に取る。 「中」=体の上下左右の真ん中 「極」=端 泌尿器系のトラブルや腰痛、冷え、血流促進に使われるツボです。せんねん灸やカイロ、湯たんぽ等を用いて温めると効果的です。

帰来(きらい)」:中極から左右に2寸(指3本)のところに取る。 「帰」=還る 「来」=戻る 呼吸法によりこのツボに気が集まることから、根底に気が帰る場所という意味。 生理痛の緩和や婦人科系の疾患、不妊症、泌尿器科のトラブルの他、EDや男性不妊にも使われる代表的なツボです。ツボ押しはもちろん、せんねん灸やカイロ、湯たんぽ等を用いて温めると効果的です。

血海(けっかい)」:膝のお皿の上の内側角から2寸(指3本)上に取る。 「海」=戻って集まるところ(河川の水は海に戻ることから) 血:血液の海、つまり血がたくさん集まる場所であることから名付けられました。血流や血液に関する症状の際に使われるツボです。特に下半身の血流促進によく使われるツボです。

足三里(あしさんり)」:膝を軽く曲げると、膝のお皿のすぐ下に内側と外側2つのくぼみが出て来るため、その外側のくぼみから2寸(指3本)下に取る。 足の疲れや胃腸の働きを助けると古くから知られている代表的なツボで、俳人である松尾芭蕉も「足三里」に灸をすえて、奥の細道を旅したといいます。ツボ押しはもちろん、せんねん灸で温めるのも効果的です。

三陰交(さんいんこう)」:内くるぶしの3寸(指4本)上、骨の際に取る。 足の三陰経(肝・脾・腎)が交わる穴。女性のためのツボとも言われていて、下半身の血流改善や冷えに使われるツボです。せんねん灸をで温めるのも効果的です。

 

今週も読んで下さりありがとうございました。 今回ご紹介させていただいたツボはPMSにももちろん効果がありますが、特に月経予定日の1週間ほど前からツボ押しを行ったり、温めたりすると生理痛をやわらげる効果が期待されます。 夏が終わり空気が冷たく変化し始めている今の時期、お身体が冷えて血流も悪くなってしまいやすいです。血流が悪いと症状の悪化などが懸念されますので、ぜひ今回のブログをご活用頂き、辛いPMS、生理痛を乗り越えましょう!

来週は・・・「PMSの文献レビュー」「PMSのメタアナリシス・引用文献」に関してお話させて頂きます。

セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木

東洋医学㉔ 食事

2020.04.03

こんにちは!

セドナ整骨院・鍼灸院のアロマセラピスト、前田です。

 

前回は「薬膳理論」についてご紹介しました。

 

簡単におさらいしますと、

 

①食材の「五性」を考える

 

②食材の「五味」を考える

 

③食材の「陰陽」を考える

 

④季節を考慮する

 

⑤体質を把握する

 

薬膳は①~④を踏まえた上で、⑤=「その人の体質に合わせた」食材を選ぶことで「処方」出来るのです。

 

 

今回は①「五性」と②「五味」について詳しくご紹介します。

 

 

 

①「五性」

五性は食材を『身体を温めるor冷やす作用』によって分類するものです。

温める作用から冷やす作用まで以下の順に以下の5つが「五性」です。

 

・熱性:身体の冷えを強く温める。興奮作用や新陳代謝の促進作用がある。(山椒、唐辛子、胡椒等)

 

・温性:身体の冷えを温める。作用が穏やかで冷えに効果的。(生姜、葱、鶏肉、鯵、黒砂糖等)

 

・平性:寒熱の働きを持たない穏やかな食材。多くの食材が属する。(穀類、芋類、豚肉、果物等)

 

・涼性:体を冷やし熱邪を取り除く。夏やのぼせに効果的。(大根、胡瓜、法蓮草、セロリ等)

 

・寒性:体を強く冷やし熱邪を取り除く。鎮静作用や解毒作用、消炎作用がある。(西瓜、苦瓜、貝類、白砂糖等)

 

 

熱性と温性の食材は体を温めるだけでなく、痛みを抑えたり、気と血の巡りを促す作用があります。

また、「昇浮(上昇・発散)」の傾向があるので、精神を陽気にしたり、風邪や肝気を取り除く作用があります。

反対に寒性と涼性の食材は体を冷やすだけでなく、毒を排除し、身体を潤す作用があります。

また、「降沈(下降・泄利)」の傾向があるので、頭に上がった熱を下げたり、精神安定の作用があります。

平性はそのどちらの作用も持たずきわめて穏やかな性質なので虚弱体質の方や病後・高齢の方なども安心して食せるという利点があります。

 

 

 

②「五味」

五味は五行論に基づいている分類で、それぞれの味が五臓にも対応しています。

五味・五臓・作用は以下のようになります。

 

酸:酸味の食材は肝を養います。収斂・固渋作用があり、体内から の過剰な発散を防ぎ、筋肉を引き締める作用があります。寝汗、下痢、頻尿、咳などに効能的です。(杏、梅、柘榴、五味子、山査子、酢等)

 

苦:苦味の食材は心を養います。清熱・解毒・消炎・鎮静・利尿・通便・燥湿の作用があります。発熱、ニキビ、食欲不振などに効果的です。(苦瓜、菊花、銀杏、茶葉等)

 

甘:甘味の食材は脾を養います。滋養作用・緊張を緩和し痛みを取る作用があります。慢性疲労、虚弱、疼痛などに効果的です。(穀類、果物、蜂蜜、南瓜等)

 

辛:辛味の食材は肺を養います。体を温め、気血の循環をよくし、滞っているものを発散させる作用があります。冷え、?血、疼痛などに効果的です。(生姜、葱、大蒜、胡椒等)

 

鹹:鹹味(塩辛)の食材は腎を養います。化痰・固いものを和らげ塊を解消する為通便作用があります。血虚、便秘、腫塊などに効果的です。(海藻、海塩、海老等)

 

 

 

「五性」と「五味」の概念は生薬とほぼ同様ですが、食材の作用は生薬の作用に比べて穏やかです。

しかし、日々の食事によって正気を蓄え、陰陽のバランスを保つことで『未病』のうちに治療することができます。

 

毎日の食事の食材の選び方を是非見直してみてください。

 

 

 

次回は「薬膳理論」の④「季節を考慮する」について詳しくご紹介していきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

東洋医学㉓ 食事

2020.03.07

こんにちは!
セドナ整骨院・鍼灸院のアロマセラピスト、前田です。

前回から「薬膳」についてご紹介しています。

簡単におさらいしますと、

中医学の観点からみると身体に良い食事は

食用・食養・食療・薬膳の4種に分類されます。

 

「食用」は季節や土地・環境に応じて栄養バランスを整えた食事を指します。

 

「食養」は季節や土地・環境だけでなく、体質にも考慮した「身体を養う」食事です。

 

「食療」は中医学理論に従い、不調や疾病の改善を目的として補養効果を取り入れた食事を指します。

 

 

「薬膳」は「食養」から更に『生薬』を加えた病気を治療するための膳食になります。

 

 

 

 

今回からは「薬膳理論」について更に詳しくご紹介していきます。

 

 

おさらいでも申し上げたように『薬膳』は中医学理論に従った

「食療」に「生薬」を加えたものになります。

この「生薬」は薬理作用のある自然物であるとされます。

おそらく「生薬」と聞くと、菊花や枸杞子、桂皮や陳皮などの植物の生薬のみをイメージされる方が多いかと思います。
確かに生薬の中でも植物性生薬はそのほとんどを占めます。

植物の種類で言えば種子植物、シダ類、地衣類、藻類、菌類由来の生薬が存在します。

また植物の部位では全草、根茎、皮、枝、葉、花、果実、種子、分泌物などさらに細分化されます。

 

植物以外の生薬は鉱物性生薬と動物性生薬があります。

 

鉱物性生薬は岩石や鉱物などの無機物から生成されます。

 

代表的な物は「石膏」で、身体の熱を冷ましたり、激しい口渇に用いられる生薬です。

 

動物性生薬は哺乳類、爬虫類、昆虫類、貝類に由来するものから生成されます。

代表的な物は「牡蛎」で、不安や不眠、動機、頭痛、めまいなどに用いられる生薬です。

 

生薬の効能は、その重さも重要な手掛かりであるとされています。

自然の法則として、重いものは落下・沈殿し、軽いものは上昇・拡散する性質があります。

これを「天人合一」の考え方に当てはめると、体内でも同じ現象が起こると考えられます。

つまり、軽い生薬は体内に入ると上昇の性質を持ち、中から外へ拡散します。

薬理効果としては、表面の邪や寒邪を取り除く作用などがこれに該当します。

逆に、重い生薬は体内に入ると下降の性質を持ち、外側から内側に沈みます。

薬理効果としては、上逆を鎮めたり、熱邪を取り除いたり、利尿作用などがこれに該当します。

 

また、生薬には効果が発揮される臓腑や経絡が決まっていて、これらを「帰経」といいます。

「帰経」は今後詳しくご紹介する「五味」と深い関係があります。

例えば、酸味の帰経は肝経である為、適量の酸味は肝を保養します。

同様に苦味は心、甘味は脾、辛味は肺、鹹味(塩辛味)は腎を保養します。

 

 

次回は薬膳のもう一つの大きな要素=「食療」の部分のポイントについてご紹介します。

どうぞよろしくお願いいたします。

「東洋医学㉒ 食事」

2020.02.21

こんにちは!
セドナ整骨院・鍼灸院のアロマセラピスト、前田です。

 

少しずつ暖かい日が増えてきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

実はこの時期は様々なアレルギー反応に悩む方が増える季節なのです。

寒暖差、花粉、乾燥による敏感肌等、原因も症状も様々ですが

予防・対策は「質の良い睡眠・適度な運動・バランスのとれた食事」を日々心掛け

身体の状態を整えておく事が重要になります。

今回から東洋医学の観点からみた「食事」についてご紹介していきます。

 

中国では「薬食同源」として、食事から薬が生じるものと考えられてきました。

似ている言葉として「医食同源」という言葉を知っている方は多いかと思います。

医食同源は、日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を

予防・治療しようとする考え方ですが、これは「薬食同源思想」から着想を得て、近年、日本で造語されたものです。

 

古代中国では乳製品や生肉を多く食べる地域があり、そこでは内臓疾患や食中毒が多く発生していました。

その治療の為に鍼灸や漢方薬が発達をしたのですが、それと同時に食物自体の研究も発展を遂げました。

『黄帝内経』「素問」臓気法時論篇第二十二において

“五穀為養、五果為助、五畜為益、五菜為充、気味合而服之、以補益精気”という文章がよく引用されています。

 

これらは、食の医療作用を明確に解説しているのですが、解りやすくすると以下のようになります。

 

・五穀(穀類)は五臓を養う

・五果(果物)は五臓の働きを助ける

・五畜(肉類)は五臓を補う

・五菜(野菜)は五臓を充実させる

 

このように多くの食材を組合せ、陰陽のバランスを考えて食すると

身体の精気を補うことが出来ると解説しています。

 

 

最近では、身体に良い食事を「薬膳」という事が多いのですが

厳密には食用・食養・食療・薬膳の4種に分類されます。

「食用」は季節や土地・環境に応じて栄養バランスを整えた食事を指します。

これに対し、「食養」は季節や土地・環境だけでなく、体質にも考慮した「身体を養う」食事です。

老化防止や美容、体重管理などを目的とした食事を取り込むことも「食養」に含まれます。

 

「食療」は不調や疾病の改善を目的として補養効果を取り入れた食事を指します。

中医学理論に従い、主に弁証論治に基づいて五性や五味を考慮した膳食で

主に虚弱時や病気からの回復食として用いられます。

 

「薬膳」は「食養」から更に『生薬』を加えた病気を治療するための膳食になります。

『生薬』が治療効果を担い、その治療を補佐する「食養」の食事を組むことで「薬膳」に成るのです。

「薬膳」は正式名称を「中医営養薬膳学」と言います。

その為、「薬膳」は料理ではなく、「学問」の一種であるという考えもあります。

 

次回は「薬膳理論」について詳しくご紹介していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

「東洋医学⑳ 奇恒の腑 2」

2020.01.16

こんにちは!
セドナ整骨院・鍼灸院のアロマセラピスト、前田です

 

前回は「奇恒の腑」の不調についてお話させていただきました。

簡単におさらいをしますと、「奇恒の腑」は五臓とも六腑とも異なる『通常ではない臓器』とも言われます。

具体的には、脳・髄・骨・脈・胆・胞宮(女子胞)を指します。

これら6つの奇恒の腑は機能的には五臓と似て、精気を貯蔵して身体の成長活動の源を担っています。

 

一方、形は腑に似ていますが、六腑のように消化吸収をすることもなく、胆以外は対になる臓腑もありません。

 

その為『奇恒=通常ではない』と呼ばれています。

前回は「奇恒の腑」のうちの脳・髄・骨についてご紹介しました。

 

「脳」は頭骨の内部にある大きな「髄」であると考えられています。

また、「骨」は「髄」によって養われており、「脳」や「骨」の中を満たしているのが「髄」です。

今回は「奇恒の腑」のうち、脈・胞宮・胆の働きと不調について説明していきます。

 

「脈」は「脈は血の府」と『素問』脈要精微論篇に記されていて、現代で言う血管とほぼ同義とされています。

脈はその中に営気と血を通し、気血を全身に行き渡らせる働きを持ちます。

 

そして、血液が血管を『環の端無きが如く』流れていくことから、『正経十二経脈』の三循環式の考え方が生まれたと言われています。

 

脈は心と関係が深い為、心が変調をきたすと脈にも不調が現れます。

脈に不調が生じると、営血が全身に巡らなくなり、脈拍の異常等の症状が現れます。

 

 

「胞宮」は子宮を中心とした女性の内生殖器官全体を指します。

胞宮の主な働きは、月経と懐胎・出産と司る事と、肝血と腎精を主原料とする精血を蓄える事です。

精血の状態の変化や胞絡(衝脈・任脈・督脈)の失調が起こると、胞宮にも不調が現れます。

 

月経では月経不順・月経痛・帯下・不正出血・閉経等

懐胎では悪阻・胎児の不育・逆子等、出産では微弱陣痛や流産等が代表的な症状例です。

 

 

「胆」は「奇恒の腑」の中で唯一、「六腑」にも属しています。

これは胆が消化吸収の機能を持つ一方、

飲食物の移送・貯蔵に関しない性質に所以します。

胆は肝と表裏関係にあり、肝が変調を生じると胆にも不調が現れます。

胆に変調が生じると胆汁の分泌に異常が生じ

飲食物が胃から逆流を起こしやすくなります。

又その影響で、耳鳴りや黄疸などの症状が現れやすくなります。

 

 

これまで各器官・各臓腑の働きと変調に伴う不調についてお話ししてきました。

次回以降は、日常生活でこれらの不調をいかに防ぐか。

という事についてお話ししたいと思います。

 

次回からは中医学論に基づいた食養生「薬膳」についてご紹介していきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

「東洋医学⑳ 奇恒の腑」

2020.01.10

こんにちは!
セドナ整骨院・鍼灸院のアロマセラピスト、前田です。

前回は「水の臓=腎」の不調についてお話させていただきました

簡単におさらいをしますと、腎の主な働きは精を蔵する「蔵精作用」

吸入した気を肺から腎に降ろす「納気作用」、水液代謝を調節する「主水作用」です。

腎が不調になると以下のような症状が出やすくなります

・身体の不調:発育不良、性機能減退、呼吸困難、浮腫み、排尿障害

 

今回は「奇恒の腑」の不調について説明していきます。

 

 

 

「奇恒の腑」は五臓とも六腑とも異なる

『通常ではない臓器』とも言われます。

具体的には、脳・髄・骨・脈・胆・胞宮(女子胞)を指します。

これら6つの奇恒の腑は機能的には五臓と似て

精気を貯蔵して身体の成長活動の源を担っています。

一方、形は腑に似ていますが

六腑のように消化吸収をすることもなく、胆以外は対になる臓腑もありません。

その為『奇恒=通常ではない』と呼ばれています。

「脳」は頭骨の内部にある大きな「髄」であると考えられています。

また、「骨」は「髄」によって養われており

「脳」や「骨」の中を満たしているのが「髄」です。

今回はこの3つの奇恒の腑の働きと

それぞれの変調による不調を紹介していきます。

 

「脳」は髄の海ともいわれ、体内において髄を最も多く蓄えています。

古代中国では、脳は主に五官の働きと四肢の運動・感覚を支配すると考えられていて

「脳=精神活動の中心」と重要視されるようになったのは現代になってからです。

したがって、蔵相学説でも脳の変調は五官・四肢の不調として現れるとされています。

具体的には、脳を満たす髄精が不足することで脳髄の栄養状態が悪くなってしまいます。

それにより、健忘、めまい、耳鳴り、五官(鼻・目・口唇・舌・耳)の不調が症状として現れます。

又、脳の髄が不足すると疲れやすく、活力が無くなります。

悪化すると四肢の倦怠感や脱力感など、運動感覚に症状が現れます。

 

 

「髄」は脳や骨の中にあり、骨格を滋養する「腎精」が変化したものとされています。

 

髄が虚すると骨に栄養を供給することができなくなってしまう為、骨格が脆くなってしまいます。

骨髄が空虚になってしまうと骨盤周りが不安定になりやすく、足が萎えて歩行困難等の症状が現れます。

又、「歯は骨の余り」とされており、歯のぐらつきなどが生じる場合もあります。

 

「骨」は『霊枢』の経脈篇に「骨を幹と為す」とあるように、身体を支える柱です。

又、『素問』の脈要精微論篇では「骨は髄の腑」とされ

骨には髄が蓄えられ、骨は気・血と髄によって養われています。

骨と髄は腎との関りが深く、腎気が不足すると、骨に影響が現れやすくなっています。

腎気が減った影響で骨の髄が減った状態が常になると、骨粗しょう症などの症状が現れます。

逆に腎気が熱を帯びると腰が抜けたような状態になりやすくなってしまいます。

次回も「奇恒の腑」の不調についてご紹介していきます。

「東洋医学⑲ 水の臓=腎」

2019.12.23

こんにちは!
セドナ整骨院・鍼灸院のアロマセラピスト、前田です。

前回は「金の臓=肺」の不調についてお話させていただきました。

簡単におさらいをしますと

肺の主な働きは皆さんご存知の通り「呼吸作用」です。

 

これを東洋医学的に説明しますと、気や津液を全身に拡散させる「宣発作用」と

気や津液を下方に降ろす「粛降作用」に分けることができます。

肺が不調になると以下のような症状が出やすくなります。

・身体の不調:風邪に罹りやすくなる、胸悶、喘息、息切れ
・情緒面の不調:喪失感、思考や感情の鈍り、うつ

 

今回は「水の臓=腎」の不調について説明していきます。

 

「腎」には、精を蔵する「蔵精作用」

吸入した気を肺から腎に降ろす「納気作用」

水液代謝を調節する「主水作用」

の3つの生理的機能があります。

 

まずはこの3つの作用と作用の不調に伴う症状を一つずつ解説していきます。

 

「蔵精作用」は精を貯蔵する作用です。

精には父母から受け継いだ「先天の精」と飲食物から得る

「後天の精」があり、その両方が腎に蓄えられています。

これらの精(腎精)にも陰と陽があり

腎陽が腎陰を熱することで腎精が働きを得ます。(=腎気)

腎気は命門から丹田、三焦を通り全身に運ばれて身体の維持と発達に関与します。

 

 

「蔵精作用」が失調すると「腎精」が不足してしまいます。

その場合の症状は年齢によって異なるのですが、乳幼児は発育不良、

思春期は性の成熟不良、成人では性機能減退

老年期では痴呆や足腰の弱りなどの老化現象として現れます。

また、腎精は骨の髄を生成する働きもある為

腎精が不足すると骨が脆くなります。

その結果、歯が抜けたり、骨粗しょう症になりやすくなります。

 

「納気作用」は吸入した気を肺から腎に降ろす作用です。

前回ご紹介した肺の「呼吸作用」の続きになるのですが

呼吸の「呼」は肺の宣発作用が担っています。

そして「吸」は肺の粛降作用と腎の納気作用が担っているのです

つまり「呼吸作用」は肺のみではなく

肺と腎が両方機能して初めて正常に行われるのです。

 

この「納気作用」が失調すると「清気」を腎に降ろすことが難しくなってしまいます。

その為、息切れや呼吸困難などの呼吸機能に様々な支障が生じやすくなってしまいます。

 

「主水作用」は納気作用によって気と一緒に腎に送られた水液の代謝を調節する作用です。

腎はこの水液を清濁(必要な部分と不要な部分)に分けます。

そして必要な清の部分を胸中に戻して全身の滋潤に利用します。

濁の部分は膀胱に送られ尿となって体外に排出されます。

このような「水液の貯蔵・散布・排泄」といった機能をまとめて「主水作用」といいます。

この「主水作用」が失調すると体内に水分が停滞し、浮腫みや冷えが生じます

また、腎の不調から膀胱が正常に機能しなくなってしまうと尿量の減少や頻尿

失禁といった異常がみられるようになります。

このような「腎」の不調が生じた場合は、身体を温めることが非常に重要になります。

体を冷えから守るために重要なのは、大きな血管が集まっている体の中心部

つまりおなか、腰、おしりを温めることです!

手足の先が冷える人も、まずは体の真ん中を温めると効率よく末端まで血が行渡り冷えにくくなるので効果的です。

また、漢方的には0時から2時までの間は子時(しし)といって

「腎」にとって大切な時間といわれています。

この時間帯を静かに過ごすことで、「腎」養われるので、夜更かしをせす

早寝早起きで睡眠時間を確保することが「腎」の回復・養生のカギになります。

 

次回からは「奇恒の腑」の不調についてご紹介していきます。

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