


3月になると
「寝つきが悪くなった」
「夜中に目が覚める」
「眠っているはずなのに疲れが取れない」
といった相談が増えてきます。
寒さが和らぎ、日照時間も少しずつ長くなる時期ですが、体にとっては意外と負担の大きい季節です。
その背景に深く関わっているのが、HPA軸と呼ばれるストレス反応の仕組みです。
HPA軸とは、
視床下部(Hypothalamus)
下垂体(Pituitary)
副腎(Adrenal)
の頭文字を取ったものです。
この3つは、私たちがストレスを感じたときに連動して働き、コルチゾールというホルモンを分泌します。
コルチゾールは本来、
・朝の目覚めを助ける
・血圧や血糖を保つ
・炎症を抑える
など、生命維持に欠かせない役割を持っています。
しかし、ストレスが長く続くと、このHPA軸が過剰に働き続けてしまいます。
3月は気づかないうちに、ストレス要因が重なります。
・年度末による仕事の忙しさ
・異動、退職、引き継ぎ
・進学や就職など生活環境の変化
・寒暖差による身体的ストレス
これらはすべて、HPA軸を刺激する要因です。
特に問題なのは、「自分ではストレスと感じていない」ケースです。
頭では「大丈夫」と思っていても、体はしっかりと変化に対するストレス反応を起こしています。
その結果、夜になっても交感神経のスイッチが切れず、コルチゾールが高い状態のままになりやすくなります。
本来、コルチゾールは朝に血中数値が高くなり、日中の活動をサポートする役割を担っています。そして睡眠時は分泌の必要がなくなるため夜に向かって下がっていくというホルモン分泌の概日リズムがあります。
このリズムが崩れると、眠気が出にくくなり、不眠につながります。
眠れない状態が続くと、HPA軸はさらに過敏になります。
「眠れないこと自体」が新たなストレスとなり、
→ コルチゾールが高い
→ 眠れない
→ さらに疲れる
という悪循環に入りやすくなります。
この時期に多いのが、
・朝起きてもスッキリしない
・日中ぼーっとする
・肩こりや胃の不快感が強くなる
といった、いわゆる自律神経症状です。
鍼灸や整体治療は、HPA軸に直接働きかけるわけではありません。
しかし、臨床的には
・過緊張状態をゆるめる
・副交感神経が働きやすい状態をつくる
・「休める体」に戻す
という点で、睡眠との相性は良いとされています。
特に春先の不眠は、「眠らせる」よりも「力を抜ける状態を作る」ことが重要です。
首や背中の緊張、呼吸の浅さ、お腹の張りなどを整えていくことで、夜の過覚醒が落ち着いてくるケースは少なくありません。
春の不眠は、放っておくと夏まで引きずることがあります。
「季節の変わり目だから仕方ない」と我慢せず、体のサインとして受け取ることが大切です。
眠れない、疲れが抜けない、気持ちが落ち着かない。
そんなときは、体の緊張や自律神経の状態を一度見直してみるのも一つの方法です。環境が変わる季節だからこそ、がんばるための体ではなく、回復できる体を整えていきましょう。
本記事は、内分泌学・睡眠医学・心身医学分野の研究報告を参考に構成しています。