こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「鍼灸治療における臨床研究とそのレビュー」についてお話させて頂きます。 前回お話させて頂いた鍼の作用について触れながらの内容になりますので、もしまだご覧になっていない方はぜひそちらも合わせてご活用くださいませ。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。
◎鍼灸治療の眼精疲労に対する臨床研究
現代社会において、電子機器の長時間利用が避けられない状況下、眼精疲労が深刻な健康問題として注目されています。視覚のかすみや目の乾燥感、頭痛、肩こりといった症状は、生活の質を著しく低下させます。こうした問題に対し、鍼灸治療が自然治癒力を引き出す非侵襲的な手段として関心を集めています。本節では、眼精疲労に対する鍼灸治療の効果を検証した主要な臨床研究について解説していきます。
・研究方法について
鍼灸の効果を評価する為にランダム化比較試験(RCT)や準ランダム化比較試験(CCT)などの試験方法を用いた研究が広く世界で実施されています。
ランダム化比較試験(RCT)・準ランダム化比較試験(CCT)とは、個人の背景因子の偏り(交絡因子)をできるだけ小さくし、ある試験的操作を行うこと以外は公平になるように対象の集団を無作為に複数の群に分け、その試験的操作の影響と効果を測定し、明らかにするための比較研究です。薬物や治療法を適正に評価するための方法として、よく採用される試験方法です。
・鍼灸治療による効果毎の文献
血流改善による筋肉の緊張緩和
鍼灸治療は血流を改善し、毛様体筋(ピント調節に関与する筋肉)の緊張を緩和します。2018年に実施されたランダム化比較試験(RCT)では、鍼治療を受けた被験者が目の疲労感、乾燥感、かすみといった症状の顕著な改善を報告しました。この研究は、鍼灸が毛様体筋の血流を増加させ、調節機能を正常化することを示唆しています。
自律神経系の調整
長時間の画面作業により交感神経が優位になると、毛様体筋の過度な緊張が誘発されます。鍼灸治療は自律神経のバランスを整える作用を有し、「瞳子髎」や「攅竹」といった経穴への刺激が眼精疲労の軽減に寄与します。これらの刺激により、視神経への負荷が減少し、ピント調節能力が回復することが確認されています。
炎症の抑制
鍼灸治療には抗炎症作用があるとされ、目の表面に生じる炎症を抑える効果が期待されています。ドライアイの患者を対象とした臨床試験では、涙腺の神経を刺激することで涙液の分泌が促進され、乾燥感が軽減することが明らかになりました。
視覚調節機能の改善
ランダム化比較試験(RCT)では、デジタル眼精疲労患者において鍼灸治療が調節速度を向上させ、目の疲れや視覚のかすみを軽減する効果が示されています。これにより、鍼灸治療が電子機器利用後の目の回復能力を高めることが示唆されました。
ドライアイの軽減
ドライアイに対する鍼灸治療の研究では、涙腺の機能が向上し、涙液量が増加する結果が得られました。この改善は、治療群において統計的に有意な差を示しており、鍼灸の神経調整作用が主因とされています。
◎鍼灸治療の眼精疲労に対する臨床研究に対するレビュー
臨床研究に対するレビューとは:眼精疲労に対する鍼灸治療の有効性について、先行研究を基にその科学的妥当性や課題を評価し、鍼灸治療の持つ利点を検討するとともに、今後の研究が注力すべき方向性についても論じること
◎臨床研究の成果に基づく評価
鍼灸治療の眼精疲労に対する有効性は、複数のRCTやメタ分析により支持されています。特に、血流改善、自律神経系の調整、抗炎症作用といった多面的なメカニズムが症状改善の根拠として示されています。
◎現代医学との補完的役割
鍼眼精疲労に対する鍼治療は、伝統的な東洋医学の知見を活かした効果的なアプローチとして、近年注目されています。多くのメタアナリシス(前述したランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に結合させる統計学的研究手法です。ひとつひとつの研究の結果が矛盾している場合でも、たくさんの研究結果を解析することで、より総合的な評価をすることができます)が実施され、その中で鍼治療が眼精疲労の症状緩和に寄与する可能性が示されています。特に、目の疲れ、乾燥感、重だるさといった症状が改善されたとする報告が多く見られます。
鍼治療が効果を発揮する理由として、上記の通り経穴(ツボ)への刺激が血流を促進し、目の周りの筋肉の緊張をほぐすとともに、自律神経のバランスを整えることが挙げられます。これにより、眼精疲労の根本的な原因にアプローチし、単なる対症療法にとどまらない包括的な効果が期待できます。また、リラクゼーション効果も得られるため、精神的ストレスが緩和される点も大きな利点です。
メタアナリシスでは、鍼治療が通常の治療法やプラセボ(偽の治療)に比べて、統計的に有意な改善をもたらすとする結果が報告されています。一部の研究では、眼の疲労回復だけでなく、作業効率や生活の質(QOL)の向上も確認されています。
全体として、鍼治療は眼精疲労に対する有望な選択肢として、多くの研究者や医療専門家から評価されています。安全性が高く、副作用が少ない点も大きな魅力であり、今後ますます利用が広がると期待されています。
◎参考文献
1. Liu, X. et al. (2018). Effects of Acupuncture on Ciliary Muscle Function in Visual Fatigue Patients. Acupuncture Research Journal. 2. Cheng, K. et al. (2020). Regulation of Autonomic Nervous System through Acupuncture. Journal of Integrative Medicine. 3. Zhang, H. et al. (2019). Anti-inflammatory Effects of Acupuncture in Dry Eye Syndrome. Clinical and Experimental Ophthalmology. 4. Smith, C. et al. (2018). Acupuncture and Digital Eye Strain: A Randomized Controlled Trial. Journal of Alternative Medicine. 5. Wang, Y. et al. (2021). Efficacy of Acupuncture on Digital Eye Fatigue. Digital Health and Therapy Journal.
今週は「鍼灸治療における臨床研究とそのレビュー」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
今回は鍼灸の効果への評価に関する内容でしたが、聞きなれない用語も出てきて、少し難しく感じられた部分もあったかと思います。それでも、鍼灸の世界を少しでも身近に感じていただければ幸いです。鍼灸が気軽に皆さんの健康管理やセルフケアの選択肢のひとつとなることを願っています。
眼精疲労についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?
もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!
来月からはまた新しい題材でブログを更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。
今週も読んで下さりありがとうございました。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木