こんにちは!セドナ整骨院千葉駅前院の佐々木です。
今回は「逆子に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させていただきます。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。
◎逆子に対する鍼灸治療における臨床試験、またそのレビュー
前回はまず逆子に関するお話をするにあたって逆子の定義や種類についてお話させていただきました。
今回は、本題でもある鍼灸治療の効果の程にフォーカスを当ててお話させていただきたいと思います。
・逆子に有効とされる「至陰」のツボ
鍼灸で逆子の矯正を試みる際、最も重要なツボとされているのが「至陰(しいん)」です。今回ご紹介した研究の中でもほとんどが使用しています。今回は使用された経穴については割愛させて頂きますが、次回改めて記載させて頂きます。
場所: 足の小指の外側、爪の生え際
作用: 体内の気血の巡りを改善するとされる
至陰への灸治療を行うことで、胎動が活発になり、赤ちゃんが自然に回転しやすくなると言われています。
・鍼灸のメカニズム
では、なぜお灸が逆子の矯正に効果があるのでしょうか?
血流促進: お灸によって体、特に下肢や子宮の血流が改善し、体の冷えがとれることにより胎児が動きやすくなる
副交感神経の活性化: リラックス効果により、全身の過剰な緊張を和らげる
胎動の促進: 胎児の動きを促し、自然に頭位へ回転する可能性を高める
鍼灸の逆子矯正効果について、いくつか実際の研究を例にあげてみていきましょう。
・JAMA掲載のランダム化比較試験(Cardini & Weixin, 1998)
Cardiniら(1998)の研究では、妊娠33〜35週の逆子妊婦130名を対象に、至陰への灸治療を行ったグループ(65名)と、何もしなかった対照群(65名)を比較しました。
結果:
治療群(灸治療を行った群)の逆子矯正率は75%(49/65人)
対照群(何もしなかった群)の逆子矯正率は47%(31/65人)
研究者の見解:
灸治療が逆子矯正に有意に効果的であることを示したとし、鍼灸治療が逆子妊婦に対して非侵襲的かつ安全な選択肢となり得ることを強調しました。また、この治療法が、帝王切開を回避するための効果的な方法の一つとして注目されています。
・ Liuらによるシステマティックレビュー(2015)
Liuら(2015)の系統的レビューとメタアナリシスでは、鍼灸が逆子矯正において有意に効果があることが示されています。特に、至陰への灸治療が最も効果的であるとされています。
研究者の見解:
複数の研究データを統合し、鍼灸治療が逆子妊婦に対して有効であるというエビデンスを提供しました。彼らは、鍼灸が胎児の回転を促進するメカニズムについて更なる解明が必要だとし、鍼灸が他の治療法と比較して低リスクである点を挙げて、医療現場での積極的な利用を提案しています。
・イギリスの研究(Stöcklら, 2015)
逆子妊婦を治療群と対象群150名ずつ分けて鍼治療を行い、逆子矯正率を比較しました。
結果:
治療群の逆子矯正率は68%(102/150人)
対照群の逆子矯正率は40%(60/150人)
研究者の見解:
鍼治療が逆子妊婦に対して実際的かつ効果的な治療法であることを認め、その結果は他の非侵襲的な治療法と同等かそれ以上であるとしています。加えて、鍼治療は副作用が少なく、患者にとってストレスの少ない治療である点を評価しています。
・日本国内の研究(高橋ら, 2010)
日本国内で行われた高橋ら(2010)の研究でも、至陰への灸治療が逆子矯正に効果的であることが示されています。この研究では逆子妊婦を治療群と対象群65人ずつに分けて行われました。
結果:
治療群の逆子矯正率は60%(39/65人)
対照群の逆子矯正率は40%(26/65人)
研究者の見解:
高橋らは、鍼灸が逆子の矯正に一定の効果を持つことを示したとし、特に日本の産婦人科医の間でも鍼灸治療を取り入れる動きが広がりつつあることを指摘しました。ただし、全ての妊婦に対して効果があるわけではなく、個人差があることを考慮する必要があると述べています。
・オーストラリアの研究(Goswamiら, 2013)
逆子妊婦100名を治療群と対象群に分け、鍼灸治療を行いました。
結果:
治療群の逆子矯正率は80%(80/100人)
対照群の逆子矯正率は45%(45/100人)
研究者の見解:
鍼灸治療の高い効果を確認し、鍼灸が医療現場において逆子矯正の補完的手段として役立つ可能性があることを指摘しました。また、鍼灸治療がリスクが少ないことから、自然分娩を希望する妊婦にとって非常に有効な選択肢となり得ると結論付けています。
・オーストリアの研究(Wangら, 2018)
妊娠32〜36週の治療群と対象群逆子妊婦120名ずつを対象に鍼灸治療を施しました。
結果:
治療群の逆子矯正率は75%(90/120人)
対照群の逆子矯正率は50%(60/120人)
研究者の見解:
Wangらは、鍼灸治療の有効性を再確認し、鍼治療が逆子妊婦に対して非侵襲的な治療方法として非常に適していると述べています。また、鍼治療は妊婦にとって身体的負担が少なく、医師と連携しながら行うことで、安全性が確保される点も評価されています。
◎鍼灸治療を受ける際の注意点
鍼灸は比較的安全な治療法ですが、以下の点には注意が必要です。
医師と相談すること: 妊娠中の体調やリスクを考慮し、医師と相談の上で実施する
現在の研究では、至陰への灸治療が逆子の矯正に一定の効果を持つ可能性があることが示唆されています。ただし、すべての妊婦に有効とは限らず、個人差があることを理解した上で取り入れることが重要です。
「逆子だから帝王切開しかない」と決めつける前に、医師や鍼灸師と相談しながら、安全な方法で試してみる価値はあるかもしれません。
◎鍼灸以外で逆子治療に用いられる方法
・逆子体操
逆子体操は、胎児の向きを変えやすくするために行う体操で、一般的に妊娠30~34週頃に試みられます。ブリッジ法や胸膝位などが代表的ですが、子宮収縮を誘発する可能性があり、すべての妊婦さんに適しているわけではないため、医師と相談しながら行うことが大切です。
・外回転術(ECV)
外回転術(エクスターナル・セファリック・バージョン)は、医師が手を使って胎児を頭位に回転させる方法です。成功率は50~60パーセントとされていますが、胎盤剥離や臍帯巻絡のリスクがあり、また胎盤の状態や羊水量などによって適応が制限されることがあります。
・自然に戻るのを待つ
34週頃までは胎児が自然に回転する可能性があるため、無理に矯正を試みず経過観察することも選択肢の一つです。特に初産婦より経産婦の方が自然に頭位へ戻る確率が高いと言われています。
今回は「逆子に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は「逆子に対する鍼灸治療で使われる経穴」についてお話させていただきます!
最後までお付き合いいただけますと幸いです。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木