こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
謹んで新年のお慶びを申し上げます
本年もどうぞよろしくお願い致します。
今月は「鍼灸とIBS(過敏性腸症候群)」を題材としてお話させて頂きます。
まず導入としてIBS(過敏性腸症候群)の病態について詳しくご紹介させていただきたいと思います。
最後までお付き合い頂けますと幸いです。
◎目次・導入
・IBS(過敏性腸症候群)の病態
・IBS(過敏性腸症候群)と心の繋がり、脳腸相関について
・IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療における臨床研究、またそのレビュー
・IBS(過敏性腸症候群)に対する鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴
・参考文献
◎IBS(過敏性腸症候群)の病態
IBSは、「機能性消化管疾患」と呼ばれるカテゴリに属します。
器質的な異常(臓器にがんや潰瘍、炎症など明らかな異常があり、その結果として症状が現れること) がないにもかかわらず、腹痛や便通異常が繰り返し起こる疾患です。
消化器疾患の中でも患者数が多く、日本では成人の10~20%が経験しているとされています。特に男性より女性に多く、年代別では思春期から壮年期までみられ、20~40歳代に好発します。男性は下痢型が多く、女性は便秘型、あるいは下痢と便秘を繰り返す混合型が多く、発症時には何らかのストレスが関わっていることが多いといわれています。
【症状とタイプ別の特徴】
IBS(過敏性腸症候群)の主な症状として、以下のものがあげられます。
・慢性的な腹痛または腹部の不快感
・便秘や下痢、またはその両方を伴う便通異常
・腹部膨満感やガス過多
そしてこれらの症状は、以下の4つのタイプに分類されます。
1. 便秘型(IBS-C):便が硬く、排便が困難になるタイプ
2. 下痢型(IBS-D):軟便や水様便が頻繁に起こるタイプ
3. 混合型(IBS-M):便秘と下痢が交互に現れるタイプ
4. 分類不能型(IBS-U):明確に分類できない不規則なタイプ
これらのタイプは患者様ごとに異なり、日常生活に与える影響も多様です。
【病態のメカニズム】
IBSの病態は、複数の要因が複雑に絡み合うことで生じます。以下にその主要な要因を挙げます。
1.腸の過敏性
顕著な特徴の一つが、腸管の感覚が通常よりも敏感になっていることです。この現象を内臓過敏症(Visceral Hypersensitivity) と呼びます。内臓過敏症はIBSの腹痛や不快感の主要な原因の一つと考えられています。 具体的には、腸管内のガスの滞留や食物の通過といった日常的な腸管活動が、過剰な痛みや不快感として認識されます。この内臓過敏症は、腸管内で分泌されるセロトニン(5-HT)の作用異常や腸管神経系(ENS)の過剰反応が関与しています。
2.セロトニンの分泌異常
上記の文章にも登場した「セロトニン」ですが、セロトニンは腸管運動と感覚の調節を行う重要な神経伝達物質であり、腸管内でその大半が生成されます。IBSにおいてこのセロトニンの分泌異常が腸管の痛覚過敏や異常な運動機能を引き起こすと考えられています。
3.脳腸相関の異常
腸は脳と密接に連携して働いています。この「脳腸相関」が乱れると、腸の運動や感覚が過敏になるだけでなく、ストレスや心理的要因が症状を悪化させます。
こちらについては次回詳しくお話させていただきます。
4.腸内環境の変化
腸内環境の維持には、腸内細菌叢(腸内フローラ)が重要な役割を果たしていますが、IBSではこの細菌叢に異常が見られることが多いです。この状態を腸内細菌叢のディスバイオーシス(Dysbiosis)と呼びます。 健康な腸内では善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌など)と悪玉菌(病原性細菌)がバランスを保っていますが、IBSでは善玉菌が減少し、悪玉菌が増加する傾向があります。これにより腸内ガスの過剰発生や腸管の炎症が促進されることがあります。また、善玉菌は腸内で短鎖脂肪酸を生成し、腸管粘膜の健康を維持しているため、腸管のバリア機能が低下するとされています。
5.ストレスの影響
心理的ストレスはIBSの症状を悪化させる主因の一つです。ストレスは腸の動きを乱し、腹痛や便通異常を引き起こします。また、IBSの症状自体がさらなるストレスを生むため、悪循環に陥りやすいのも特徴です。
6.腸管運動機能の異常
IBSは腸の蠕動運動(ぜんどううんどう:食物を腸内で移動させる動き)が亢進または低下してしまい、不規則になります。この運動異常により、便秘や下痢といった便通異常が引き起こされます。特に下痢型IBS(IBS-D)では運動亢進が、便秘型IBS(IBS-C)では運動低下が顕著です。混合型IBS(IBS-M)では腸管の運動が不規則になることで、便が腸内で適切に移動できなくなり、便秘や下痢が交互に現れます。
7.食事や環境因子
IBSは食事や生活習慣によっても症状が変化することが知られています。個人差がありますが、一部の方は特定の食品(乳製品、脂肪分の多い食品、辛いものなど)が症状を悪化させるトリガーとなります。また、睡眠不足や運動不足も腸管運動や免疫機能に影響を与えます。
8.腸管免疫の活性化
腸管粘膜での低レベルの炎症反応が確認されることがあります。腸管粘膜には免疫細胞が多く存在し、外来刺激に対する防御を担っています。しかし、IBSではこの免疫反応が過剰に活性化し、腸管の知覚過敏を助長すると考えられています。
上記のようにIBSの病態は腸管の感受性亢進、運動異常、腸内細菌叢の乱れ、免疫系の活性化、食事や環境因子など、多岐にわたる要因が複雑に絡み合っています。この疾患は器質的な異常がないため、診断や治療にはこれらの多様な病態を包括的に考慮する必要があります。
【心理的要因とQOLへの影響】
先程述べたようにIBSは、身体的な不快感だけでなく、心理的負担も大きい疾患です。「また症状が出るのではないか」という不安が慢性化し、生活の質(QOL)が低下します。これにより、以下のような影響が見られます。
・社会活動や外出への恐怖感
・仕事や学業への集中力の低下
・抑うつや不安障害の併発
IBS患者ではこれらの心理的要因がさらに症状を悪化させるため、包括的なケアが必要とされます。
治療に向けた多面的なアプローチや
IBSの病態を理解することは、治療戦略を立てる上で重要です。腸の過敏性や脳腸相関の改善を目指した治療が主流ですが、心理的サポートや腸内環境を整えることも欠かせません。
今週も読んで下さりありがとうございました。
今回は「IBS(過敏性腸症候群)の病態」についてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
次回は、文章中にも出てきた脳腸相関をベースとして「IBS(過敏性腸症候群)と心の繋がり、脳腸相関」についてお話しさせていただきます。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木