こんにちは!セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。
今回は「糖尿病に対する鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴」についてお話させて頂きます。
糖尿病は、現代の健康問題の中でも最も重要な課題の一つです。血糖値の管理や合併症の予防が治療の主軸となる中で、薬物療法や食事療法、運動療法だけでなく、補完医療の選択肢も広がりつつあります。その中で鍼灸治療が注目を集めています。伝統的な東洋医学の知恵と、現代科学のアプローチが融合することで、糖尿病治療の可能性が新たに見直されています。現在では科学的な研究により、その生理学的効果が次々と明らかになっています。本記事では、糖尿病に対する鍼灸治療の効果、そして具体的に使用される経穴について解説します。
また、最後に今月更新分のブログに用いた参考文献を記載しますのでご参考までに。
◎ 鍼灸治療の効果と効能
前回お話させて頂いた研究の中から引用して作用について詳しく説明していきたいと思います。
・自律神経系の調節
鍼灸治療は、交感神経と副交感神経のバランスを整える作用があります。特に副交感神経を刺激することで、インスリン分泌の促進や血糖値の安定化が図られ、グルコース代謝の改善に有効であることが研究で示されています。また、自律神経を介して血流が促進されることで、全身の代謝機能を高める効果も期待されています。
・抗炎症効果
慢性炎症は糖尿病の進行による合併症の一つです。鍼灸治療は、痛みや腫れなど炎症反応の原因となる炎症性サイトカイン(TNF-αやIL-6など)の産生を抑えることで、炎症を軽減させます。この結果、インスリン感受性の向上や血管の健康維持につながります。
・ストレス軽減
ストレスはコルチゾールを過剰に分泌させるため、血糖値を悪化させる大きな要因となります。鍼灸治療は、血圧や血糖値を上げる一因となるコルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を抑える作用があります。その結果、血糖値が安定し、睡眠の質の向上が見込めます。さらに、ストレス軽減により患者の生活の質(QOL)が向上し、治療意欲や健康管理への意識が高まるというメリットもあります。
また上記に伴って血糖値の管理や糖尿病の合併症の改善、末梢神経を刺激することで脊髄を介して中枢神経に信号が伝わり、痛みの軽減やリラックス効果が期待できるなど多面的な効果が期待できます。
◎使用される経穴
参考文献の中で用いられていた経穴、またその他糖尿病の諸症状に役立つ経穴とそれらの効果を以下にご紹介いたします。
1. 足三里(あしさんり) – 胃経
位置: 膝の下、脛骨の外側にあります。
効果: 消化機能を高め、エネルギー代謝を促進する作用があります。特に、糖尿病において血糖値の安定を助ける可能性があり、全身の気力や体力を向上させることが期待されます。
2. 三陰交(さんいんこう) – 脾経
位置: 足首の内側、内くるぶしの上にあります。
効果: ホルモンバランスの調整や血液循環の促進に優れています。糖尿病に伴う冷えやむくみの改善、さらに内分泌系へのアプローチが可能とされています。
3. 合谷(ごうこく) – 大腸経
位置: 手の甲、親指と人差し指の骨が交わる部分にあります。
効果: 自律神経の働きを整えることで、ストレスの軽減に寄与します。血糖値変動の背景にある精神的負担を和らげる点で重要な経穴です。
4. 太衝(たいしょう) – 肝経
位置: 足の甲、第1趾(親指)と第2趾(人差し指)の間のくぼみにあります。
効果: 血流の改善や筋肉の緊張緩和に役立ちます。また、リラックス効果をもたらし、身体全体の調和を図る作用があります。
5. 内関(ないかん) – 心包経
位置: 前腕の内側、手首の中央から指3本分上にあります。
効果: ストレスや不安を和らげ、自律神経を調整する作用があります。また、精神的な安定や睡眠の質の向上にも寄与します。糖尿病患者においては、ストレス軽減を通じて血糖値の安定化に役立つとされています。
6. 百会(ひゃくえ) – 督脈
位置: 頭のてっぺん、両耳を結んだ線と正中線の交点にあります。
効果: 副交感神経を活性化し、自律神経のバランスを整える効果があります。精神を落ち着かせる作用に加え、血流促進による全身の代謝機能向上が期待されます。特に、糖尿病患者の全身的な健康管理に有用です。
7. 曲池(きょくち) – 大腸経
位置: 肘を曲げた際にできるしわの外端にあります。
効果: 炎症を鎮める効果が高く、特に糖尿病に伴う炎症や痛みの軽減に役立ちます。また、全身の免疫力を高める作用も期待されます。
8. 壇中(だんちゅう) – 任脈
位置: 胸の中心、乳頭を結んだ線の中央にあります。
効果: 呼吸を整え、心を落ち着ける作用があります。ストレスによるコルチゾール過剰分泌を抑える効果があり、血糖値を安定させる助けとなります。また、気の巡りを良くし、疲労回復にも効果的です。
◎参考文献
Liu, X., et al. (2018). Effects of acupuncture on blood glucose in type 2 diabetes mellitus patients: A randomized controlled trial. Journal of Diabetes Research.
Sun, Y., et al. (2019). Acupuncture for diabetic peripheral neuropathy: A clinical study. Pain Medicine.
Zhao, L., et al. (2021). Systematic review and meta-analysis of acupuncture for diabetes. Complementary Therapies in Medicine.
Kim, T. H., et al. (2020). “Acupuncture for the treatment of diabetes mellitus: A systematic review and meta-analysis.”
Diabetes Research and Clinical Practice, 159, 107982. Cho, W. C., & Chen, H. Y. (2009). “Clinical efficacy of acupuncture on diabetes mellitus: A meta-analysis.”
Journal of Acupuncture and Meridian Studies, 2(4), 263–265.
Lee, M. S., et al. (2009). “Acupuncture for treating peripheral diabetic neuropathy: A systematic review.”
The Clinical Journal of Pain, 25(5), 431–437. International Diabetes Federation (2021). IDF Diabetes Atlas (10th Edition).
中国中医科学院. (2015). 鍼灸学概論. 北京科学技術出版社.
日本糖尿病学会
厚生労働省
国際糖尿病連合(IDF)
アメリカ糖尿病学会(ADA)
日本医師会「生活習慣病予防と糖尿病」 日本糖尿病学会編『糖尿病治療ガイドライン 2023』(文光堂)
WHO(世界保健機関)
Standards of Medical Care in Diabetes – 2024.Diabetes Care. 国立研究開発法人国立国際医療研究センター『糖尿病の基礎知識』
鍼灸治療は、糖尿病管理の補完療法として非常に有望な選択肢です。血糖値の調整、合併症の軽減、ストレス緩和といった多面的な効果が期待される一方で、個々の患者に合わせた適切な診断と施術が求められます。また、鍼灸治療は現段階ではあくまで補助療法的な位置づけにあり、薬物療法や食事療法と組み合わせて活用することが重要です(重症度があがれば上がる程、これに該当します)
専門家との連携を取りながら、西洋医学と東洋医学を融合させより効果的な治療を目指していきましょう。
今週も読んで下さりありがとうございました。 今回は「鍼灸治療の効果と効能、使われる経穴」「参考文献」についてお話させて頂きました。
糖尿病についてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?
もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!
来月からはまた新しい題材でブログを更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。 今週も読んで下さりありがとうございました。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック千葉駅前院 佐々木