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PMS(月経前症候群)の文献レビュー・メタアナリシス

2024.10.25 | Category: 鍼灸

こんにちは。セドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院の佐々木です。

今回は「PMSの文献レビュー」「PMSのメタアナリシス・引用文献」についてお話させて頂きます。

◎PMSの文献レビューに関して

鍼灸の効果を評価する為にランダム化比較試験(RCT)や準ランダム化比較試験(CCT)などの試験方法を用いた研究が広く世界で実施されています。

ランダム化比較試験(RCT)・準ランダム化比較試験(CCT)とは、個人の背景因子の偏り(交絡因子)をできるだけ小さくし、ある試験的操作を行うこと以外は公平になるように対象の集団を無作為に複数の群に分け、その試験的操作の影響と効果を測定し、明らかにするための比較研究です。薬物や治療法を適正に評価するための方法として、よく採用される試験方法です。

PMSを題材とした試験は日本でも過去に行われており、鍼灸がPMS症状を緩和することは示唆されています。 2016年に発表されたレポートでは、月経前のイライラを主訴としてPMSの診断基準を満たしている女性を対象に、鍼灸治療を行った群と鍼治療を行わなかった群に分けて、SRS-18質問票を用いて精神状態の測定を行い治療効果を比較しました。
その結果、鍼灸治療を行ったグループは、鍼治療を行わなかった群と比較して症状の主観的な改善が見られました。 特に、主訴であったイライラを含む精神症状の改善が報告されています。また国外で行われたRCTでは、症状の緩和、特に身体的な症状(頭痛、腹部の痛み、乳房の張りなど)が軽減されたと報告されています。

◎PMSのメタアナリシス

複数のRCTを統合したメタアナリシス研究でも、鍼灸治療がPMSに対して有効である事が示唆されています。

メタアナリシス研究とは、前述したランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に結合させる統計学的研究手法です。ひとつひとつの研究の結果が矛盾している場合でも、たくさんの研究結果を解析することで、より総合的な評価をすることができます。

2020年に発表されたメタアナリシスでは鍼灸治療がPMSの症状を改善すること、特に心理的および身体的な両方の側面で症状の軽減が認められました。この研究ではPMSの症状を緩和するメカニズムとして、鍼灸が中枢神経系に働きかけ、脳内の神経伝達物質(一例としてセロトニンやエンドルフィン)の分泌を促進する事が発表内では挙げられており、体内の神経伝達物質のバランスが整えられることで、PMSの症状が緩和されるとされています。

例として挙げた「セロトニン」はPMSやPMDD(月経前不快気分症候群)などの精神面の症状と深い関係にあるため、ここで補足として少しだけお話させていただきます。

◎セロトニンについて

セロトニンは別名「幸福ホルモン」とも呼ばれる気分や感情の安定に重要な脳内の神経伝達物質で、

・喜びや快楽、意欲などを司るドーパミン
・緊張や不安、積極性を司るノルアドレナリン

の2つのホルモンのバランスを調節する役割を担っています。
そのためセロトニンが不足してしまうとイライラやネガティブな感情を引き起こしたり、やる気が起きないなどの様々な症状が出るようになります。 生理前の黄体期にエストロゲンが減少するとセロトニンも伴って減少するようになっており、この時にセロトニンが不足しやすいです。 

セロトニン不足への対応策として、

・栄養バランスの良い食事

・セロトニンの合成に必要な必須アミノ酸であるトリプトファンを含む食品の摂取

・日光浴

・良質な睡眠

・適度な運動

などがあげられますが中でも運動は特に効果的とされており、海外でも研究が行われています。今回は日常に取り入れやすい3つをご紹介させて頂きます。

1つ目はウォーキングやジョギングなどの有酸素運動です。

特に一定のリズムで行なうことでセロトニンの分泌を刺激するとされています。 目安としては週に3〜5回、20〜30分行うことで、心拍数を上げつつも無理のない範囲で継続できます。
また公園など自然の多い場所を歩くとストレス軽減効果がさらに高まります。 ご紹介する中で最も日常生活に取り入れやすいため是非ご活用ください。

2つ目はヨガストレッチです。

ヨガやストレッチは、凝り固まった筋肉をほぐして全身の血流を改善し、心身のリラクゼーションを促しストレスを軽減する効果があります。 特に深い腹式呼吸を取り入れるとさらに効果的です。呼吸は副交感神経を刺激し、セロトニン分泌を更に高めます。

3つ目はリズム運動です。

リズム運動とは、一定のリズムで身体を動かすことで、脳内でセロトニンの生成を促進する効果がある運動法です。
また自律神経のバランスを整える作用や体内時計を整える効果もあるため、質の高い睡眠を促進し、全体的なストレス軽減に寄与します。 リズム運動にはウォーキング、ジョギング、ダンス、水泳などが含まれます。 特に、ダンスやエアロビクスなどの音楽に合わせた運動は脳の報酬系を刺激し、モチベーションの向上やポジティブな感情を引き出す効果があります。
気持ちの面でも運動の楽しさを感じやすく、継続しやすい点もメリットです。グループで行うと他者との交流もストレス軽減に寄与し、社会的なつながりが心の健康を支える事にもつながります。 目安としては毎日15〜30分。最初は短い時間から始め、徐々に時間や強度を増やすことが推奨されます。 以上3つが、セロトニン分泌を促す運動です。

身体的な面でも精神的な面でも効果を感じられるかと思いますので、無理のない範囲で是非取り入れてみて下さい!

 

引用文献

H. フリーマン、E. リケルズ「月経前症候群の有病率」産婦人科

R.ヨンカーズ、K.オブライエン、S.エリクソン「月経前症候群」ランセット

五十嵐 誠「月経前症候群の治療における鍼治療」

『伝統中医学ジャーナル』第 30 巻、第 1 号

K. チェン「PMS に関連する気分障害に対する鍼治療」中国医学研究

L.スミス「月経前症候群に対するストレスとホルモンの影響」女性の健康ジャーナル

アーサー・C・ガイトン 、ジョン・E・ホール「ガイトン生理学」

編 日本理療科教員連盟、公益社団法人東洋療法学校協会、著 教科書執筆小委員会「新版 経絡経穴概論」

磯部哲也「月経前症候群の精神症状に対する鍼治療効果の比較試験」

BABジャパン出版局 「セラピスト」隔月刊2月号

Berger, B. G., & Motl, R. W. (2000).Exercise and mood: A selective review and synthesis of research employing the Profile of Mood States. In R. N. Singer, H. A. Hausenblas, & C. M. Janelle (Eds.), Handbook of sport psychology (pp. 631-647). Thaut, M. H. (2005). Rhythm, Music, and the Brain: Scientific Foundations and Clinical Applications. Routledge.

 

今週も読んで下さりありがとうございました。 今回は鍼灸の効果への評価に関する内容でしたが、聞きなれない用語も出てきて、少し難しく感じられた部分もあったかと思います。
それでも、鍼灸の世界を少しでも身近に感じていただければ幸いです。
鍼灸が皆さんの健康管理やセルフケアの選択肢のひとつとなることを願っています。

PMSについてのシリーズは一度ここで区切りとなりますが、今月のブログはいかがでしたでしょうか?

もしここについて掘り下げて欲しい等ご要望があれば是非お聞かせください!

来月からはまた新しい題材でブログを更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。

セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木


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