いつもセドナ整骨院・鍼灸院 千葉駅前院のブログを読んでくださりありがとうございます。
今回から私、佐々木がシリーズとして各症状の背景や治療の論理的基盤についてご説明させて頂きます。専門書や論文からの引用もあり少し難しい内容ではありますが、是非、ご覧頂き健康にお役立てください。
記念すべき第1回目は近年知名度が向上しつつある「月経前症候群( Premenstrual Syndrome)」、通称「PMS」について取り上げて参ります。
月ごとに題を変えて毎週金曜日に更新をしていきますので、どうぞお付き合い頂けますと幸いです。
◎目次・導入
・月経前症候群の概要と鍼灸治療への期待
・PMSに対する東洋医学的な鍼灸治療の背景と理論
・PMSに対する現代鍼灸的な理解
・PMSと自律神経系の関係
・PMSによく使われる経穴(ツボ)
・PMSの文献レビューに関して
・PMSのメタアナリシス・引用文献
◎導入:月経前症候群の概要と鍼灸治療への期待
月経前症候群(Premenstrual Syndrome 以下、PMS)は、女性の生理周期に関連する身体の精神およびその他の症状の複合体であり、特に月経前の数日から2週間程度の期間に発症します。 PMSは成人女性の約30~40%が経験され、その内の約5~10%が日常生活に支障をきたすほどの重度の症状を持つと報告されています。
PMSの症状は「身体的な症状」と「精神的な症状」の2つに大きく分けられます。
身体的な症状:頭痛、乳房の張り、腹部膨満感、筋肉痛、疲労感などが含まれます。
精神的な症状:イライラ、不安感、うつ状態、集中力の低下などが挙げられます。
これらの症状は、個人の女性によって程度が異なり、非常に多様な現れ方をしますが、重症度が高ければ日常生活、人間関係、心理的安全性など多方面で影響を与えます。
PMSの発症メカニズムは現在完全に解明されてはいませんが、主に月経周期に伴うホルモンの変動が関連していると考えられています。
またセロトニンの分泌にも影響を及ぼすとされ、これにより気分の変動やストレス感受性の増加が起こっているとされています。日々のストレスや人間関係、天候やその人の栄養状態、生活環境、睡眠週間などもPMSの発症と重症度への影響があるとされています。
現代西洋医学でPMSに対する従来の標準治療法としては、薬物療法、ホルモン療法、認知行動療法、栄養療法などが用いられています。薬物療法には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗うつ薬、ホルモンバランスを調整する経口避妊薬などが含まれます。
ただし、これらの治療法には副作用や長期的な依存性の危険性を孕んでいる事があり全ての患者様に適用したものという訳ではありません。いずれにせよ投薬によりPMSの症状改善がみられる方にも体質改善を目的とした伝統的補完代替医療は必要になると考えられます。その中でも特に鍼灸治療は昨今注目度が高い伝統的補完代替医療とされています。
◎PMSに対する東洋医学的な鍼灸治療の背景と理論
鍼灸治療は、古代から伝わる東洋医学に基づく治療法でありWHOが規定する伝統的補完代替医療の中の代表的な一つです。体内の「気:エネルギー」と「血:血液」「津液:水分・リンパ」の流れを調整する事で健康を維持し、病気を治療・予防します。
中国の医学では、気・血の流れが滞ると体にさまざまな病気や不調が現れると考えられていて、特にPMSの症状は、五臓の「肝」の機能が正常に働いていない状態と関連しているとされます。東洋医学において、肝は気:エネルギーを全身に送る重要な役割を担っています。五臓の中で特に月経周期に深く関わっていると考えられていて、肝気が乱れ「肝鬱気滞(かんうつきたい)」という気が滞り流れない状態になると、PMSのような症状が現れてしまいます。
また「肝鬱気滞」の他に、東洋医学では「脾虚湿盛(ひきょしっせい)」(脾臓の弱さと水分滞留)という状態もPMSの原因となることがあります。鍼灸治療ではこれらの滞ってしまっている気や水分の流れを解消し、全身のバランスを整えることを目的として施術を行います。
◎PMSに対する現代鍼灸的な理解
鍼灸治療によって起こる反射・反応にてPMSに伴う身体および精神的な症状が緩和されるメカニズムは世界各国で研究されており、特に鍼灸施術はストレスと強い結びつきのあるホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する事が様々な論文から示されています。
この事から鍼灸施術では体内のコルチゾールの分泌を調整する事で、患者様のストレスの軽減をもたらしPMSの症状を緩和する可能性があります。また頭部への鍼灸治療は中枢神経系にも作用し、脳内の神経伝達物質(セロトニンやエンドルフィンなど)の分泌を促進する事で、ストレスの軽減や気分の安定にも取り組む事が報告されています。以上の点からPMSに対する現代鍼灸的なアプローチは年齢・重症度・基礎疾患問わず有効だと言えます。
今週も読んで下さりありがとうございました。
来週は、、、「PMSと自律神経系」の関係についてお話させて頂きます。
セドナ整骨院・鍼灸院・カイロプラクティック 千葉駅前院 佐々木